ARTIST INTERVIEW

アーティスト・華道家ruteNの独占インタビュー。

「秋から冬へ、うつろいゆく季節の絶対美」

ruteN Solo Exhibition「impermanence」<2024年10月26日(土)〜11月4日(月・祝)>

植物の魂と深く繋がり、そこから湧き上がるイメージを展開するアーティスト、ruteN(ルテン)。華道の流派・一葉式いけ花のインスピレーションも取り入れ「花を生けるようにして描く」独自のスタイルに宿るものとは? 展覧会に向けて話を聞いた。

ーー アーティストとして活動するきっかけは?

中学生の頃から芸能界を目指して活動し、モデルのお仕事をしていたのですが、自分の体を通して表現をすればするほど自分の内側に表現したい“何か”があるけど眠っているという感覚を強くもつようになりました。

子供の頃から自分の思っていることを言葉で伝えることに苦手意識があり絵にする方が伝えやすいとは感じていて、その時々に感じていることや気持ちを絵にしていました。東京に住むようになってからは描いてなかったのですが、また描いてみようと思ったのが4年前です。

当時アルバイトをしていた西麻布のビーガンカフェでオーナーさんのご厚意からお店のスペースを使って展示をさせて頂くことになったのですが、私はこの時に初めてキャンバスに絵を描いたんです。きちんと絵を学んだこともない私の内側にあるものを日記のように描いているだけなのに見に来てくださった方々から嬉しいお言葉をたくさん頂き、ありがたさと言葉では言い表せない気持ちがこみ上げてきました。

その展示をきっかけにいろいろな方からお店の壁画を描いて欲しいなどと声をかけてもらい「描いていいんだよ」と認められたような気がして、導かれるまま(絵の道に)進んでみようと思いました。

ーー絵を描くことで、ご自身の中に眠る“何か”を呼び覚ますことはできたのですか?

子どもの頃から植物と言葉ではないコミュニケーションをとってきた感覚があり、植物と向き合っていると映像が広がるんです。同じような映像が出てくることもあるけれど毎回違う。花や木の内側に流れている気、エネルギーの流れのようなものをこちらに返してくれるイメージを描いています。それが、すごく心地いい。心地よさが正解なのかはわからないけれど、自分の内側にあるものを出せている感覚はすごくあります。

ーー生け花も同じ感覚なのでしょうか?

お花は季節がありますし展示期間が1週間以上ともなれば、その時期にある花材へと入れ替えます。その瞬間にしか見ることのできない景色、うつろいを人の手で表現することが生け花の良さだと思っています。私が学んでいる一葉式いけ花は、空間に調和する花を追及している流派で季節や土地に合わせて花材を使い独創性豊かに花を生けるのが特徴です。

絵は、植物の内側にある目には見えないエネルギーや生命力のようなものを個人的に日記に書きとめている感覚なので、いけばなとは少し違うかもしれませんが、花を生ける時にどの角度で生けてあげたら花が美しく見えるか、といったところで植物と対話しながら生けていく感覚と絵筆を入れていく感覚は自分の中で通じるものがあります。

ーーいけばなと絵を融合した展示にも取り組まれています。

一葉式いけ花は、植物とその季節にしかない躍動感、エネルギッシュさの表現をバランスを取りながら生けていく流派だと思っています。初めて作品を拝見した時、それまでの華道のイメージとはまったく違うものだと衝撃を受けました。私がずっと感じていた植物の強さと美しさを華道を通してこんなにも豊かに表現できるんだと知って「これしかない!」と思い、すぐに入門を決めました。

筆圧や絵具の乗せ方、特に空間とのバランスの取り方は一葉式いけ花で学んだことが大きく影響してます。絵といけばなを同じ空間に展示することで私が感じてるものを体感してもらえるようになったと感じています。

ーー地に色を塗り重ねては一部を剥がす手法も特徴的です。どのようにして思いついたのですか?

今の自分に行き着くまでの魂の記憶やエネルギー細胞といったものをカラフルな円に見立て、画面に敷き詰めるように描いてみたんです。その模様を絵具が乾く前に削り取ってみたら、思ってもいなかった色が出てきた。それが、どこか遠くの記憶や季節の香り、景色がふと蘇ってくる感覚、突然垣間見える何かはわからない存在の美しさと似ていると思ったんです。

そうやって出会った色をそのまま受け入れ、色や線を重ねて描いていくのは植物との対話そのものだなとも感じていますし、自分の奥底にあるものを探っていくことなんだと気づきました。

ーー画面いっぱいにひまわりを描いた作品をはじめ、黄色を主に赤や青といった鮮やかな色遣いやボリュームのある筆触が印象的ですが、深い色遣いと繊細な線描による作品も生まれています。

昨年、エリック・ローズ(※)での展示が決まって油彩画に取り組み始めた時に湧いたイメージです。今も黄色は時々使っていますが、色を何層にも重ねて深海のような色を作って……と実験しながら描いていくと、それまでの私の作風とは真逆のトーンになっていきました。アクリルにはない光沢感も含めて新しい自分が出てきた感覚です。

花、植物たちにいろんな形と色があるように視覚だけではない、もっと奥深い感覚で感じる色合いや形、空気感があります。見てくださる方が受け取る感覚に寄り添うような絵を描き続けたいと思ってます。

ーー真逆といえる作風の作品に向き合うことは、気持ちもまったく違うのでは?

鮮やかな色遣いの作品は月の満ち欠けのサイクルでエネルギーが満ちていく感じがあり、深いトーンの作品を描いている時は胎児の状態というか、羊水の中に浮いているような感覚がありますね。

自然はうつり変わっていき、そこから感じたものを絵にしているので私が感じているものも変わるのは自然なことなんだと思います。今回の展覧会では自然のうつろい、無常性をテーマにしていますが、自然と人間との「間(はざま)」を表現することも私のなかで一貫しているテーマなので、描くタイミングで線や色が違っていい。

瞬間に自分の感じたことを素直に受け入れて、その時に出てくるものを描いていこうと思います。心地よく描き続けることが今の私にとって欠かせない感覚なんです。

会場には本展のために生けられる華道作品も展示。絵画と融合した他にはないスタイルで自然のもつ崇高なエネルギーを表現するruteNの個展「impermanence」は、10月26日(土)〜11月4日(月)の期間に開催。

※表参道と横浜に店舗があるカフェ。月ごとに異なるアーティストの展覧会も企画し、ruteNは表参道店で昨年「hazama」を開催。

ABOUT ARTIST

ruteN
ruteN
Artist and flower artist from Miyazaki Prefecture. She started working as a model in Tokyo in 2014. In 2018, she studied under the fourth head of the Ichiyo style of Ikebana, Takahiro Kasuya. In 2023, she obtained a teaching certificate for the same school (pen name: Kashiwaba). She is currently a full member of the Japan Ikebana Art Association, a public interest incorporated foundation, and a member of the Ikebana Association. She began her career as an artist in 2020.

ABOUT EXHIBITION

展覧会

ruteN solo exhibition

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31  KD南青山ビル4F

Dates

2024.10.26 (Sat) - 2024.11.04 (Mon)

開館時間

平日:13:00〜19:00
初日・土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

Reception Dates

Saturday, October 26th, 5pm - 8pm [No reservations required]

Date of presence

to be decided

入館料

無料

Notes

*Please note that the dates and opening hours may change without notice depending on the situation.