ARTIST INTERVIEW

「わたし」を愛する悦び SAORI KANDA 独占インタビュー

魂が歌い、「わたし」が開かれた

SAORI KANDA個展「生命讃歌-sanctuary-」

<2025年7月12日(土)〜7月24日(木)>

女神と龍をモチーフに神話的な世界を展開するアーティスト、SAORI KANDA。南国の島々を旅したことで創作テーマである“Love yourself”の思考が深まっていると話し、迎える展覧会「生命讃歌-sanctuary-」。「わたし」を愛する儀式としてのアートを実践する彼女に話を聞いた。

ーー昨年の個展に引き続き、「生命賛歌」がテーマです。

自らの命に感謝し、自分を愛する“Love yourself”が私の創作の核にあります。これは、誰もが内にもっている女性性と男性性の調和を意味し、かつ外の世界に開かれていくことを表しています。昨年の個展から多くの経験を経て、この命を祝福する思考はさらに深まりました。絵だけでなく歌や映像も取り入れ、新しいエネルギーを追加することで、より多面的な形で表現したいと思っています。

ーー今回、バリ島での体験が大きなインスピレーションに。

バリではアーティストが沢山集まるウブドや自然豊かなパヤンガン、聖なる山として有名なバトゥール山とその周辺の滝を巡りました。画材を常に持ち歩き、スケッチブックやキャンバスにたえず描いて、水が湧き出るように作品が生まれてきました。

今回、印象に残っているのは森です。私はこれまで海が好きで、心と体を整える場所は海だったのですが、森のエネルギーと深くシンクロしたのが大きな出来事でした。以前にも訪れたことがあるセクンプルの滝では内から悦びが溢れ、自然と雄叫びを上げて声が解放される感覚がありました。そうして歌っていると目の前に虹が表れ、まるで滝を守る龍に祝福されているような体験をしました。自分の命は本当に自然の一部なのだと感じ、「生命讃歌」というテーマが私の呼吸と重なり自然なものになりました。

それから与論島にも旅をしました。異なる土地ですが、どちらも自然の中に神聖なものが宿っているのを強く感じる場所です。特にバリでは、日常的に人々が祈りを捧げ、魂や自然について会話を交わしていることがとても印象的でした。

バリ島の森では湧き水の音や鳥の歌、与論島では波音を録音してサウンド作品を制作しています。「音」が絵を描くことや踊りとつながり、私の表現においてこれまで以上に大きな要素となると感じました。森と海の両方のエネルギーを展示空間に込め、緑と青の世界を創りたいと考えています。今回の展示ではサウンドは重要な表現手段になると思います。

ーー海と森で得られるインスピレーションに違いは?

これまでは森に恐れがあったんですよね。単純に虫に刺されるのが嫌いというのもありますけど(笑)。ただ、海は「彼岸」というイメージ。波打ち際があの世とこの世の境のようで、生まれる前の記憶であり、いつか還りゆく場所にも感じる。私の魂はどこか海に安らぎを感じている。森はというと生命力そのもの。だから海と森は、死と生のコントラストなのかもしれない。

森の奥深いところには鮮やかなだけではない緑色があり、キラッと光を浴びて揺れている新緑の葉もある。自然の色のグラデーションに包まれて体が安心してほどけ、私の魂は森に委ねられていました。森のもつ生きるエネルギーにシンクロし、森への恐れが和らいだことは私にとって大きな経験です。

自然だけではなく、ウブドの街中でも新しい扉が開いていく経験はありました。私は嬉しい気持ちで絵を描いていて、そのエネルギーが人を引き寄せるのか、街中のカフェでスケッチしてると沢山の人に話しかけられました。いろいろな話をし、時には涙を流してハグすることもあって、アートを通して生命エネルギーをシェアする経験をたくさんしました。

ーーそうした経験によって生まれる表現の変化。

今回は音が大きな要素になると言いましたが、歌の扉が開かれました。絵と踊りは自分の呼吸のようになっているのですが、歌は今までスキルに自信がなく、どこか自分の中で抑え込んでいたんです。でも、今回の旅で自然と歌が溢れてきて、それが周囲に伝わりグルーヴしていくということがたくさん起きたんです。絵や踊りと同じように、歌が呼吸するように生まれた。自分の中で大きな扉が開いたと感じています。

歌が開かれたことで、これまで描いてきた女神がより一層幸せそうになっています。官能的で癒しのエネルギーに溢れる女神を福岡にいっぱい連れて行きたいですね。

ーーモチーフは龍と女神。男性性と女性性の調和を描いてきました。

(男性性を象徴する)龍は力強く物事を進める行動力と具現化する力の象徴です。一方で女神は「聖なるエロス」の象徴。エロスとは、エロティックであるという意味合いを越えた、人間が根源に持っている大切な生命エネルギーそのもの。現代社会のシステムの中では規律を守るために時としてエロスが過剰に抑えこまれていると感じています。自身の聖なるエロスを改めて尊いものとして受け入れ、愛することは真のセルフラブにつながります。生まれ持って授かった大切な身体、性、魂がつながると本来の生命力が蘇り、人はより健康に愛と悦びに溢れて生きることができます。

バリ島の滝で歌っている最中、龍に「官能的であることは、尊いこと」と耳元で囁かれたように聞こえ、女神がもつ官能の尊さを改めて感じました。私の内側で女神が龍と一緒になって悦んでいる時、私の魂は悦びに溢れています。男性と女性それぞれの内なる女神と龍が癒し合い、愛し合って、力を合わせることで優しい行いが世の中に広まる。そうして世界が平和になっていくことの願いを私は表現しています。

ーー展示はギャラリー空間に神殿を作りあげるイメージ。

神殿と言ってしまうと宗教がかったように思われるかもしれませんが、それは自分自身の内面と深くつながることを意味します。毎日多くのことに追われ、私たちは大自然の一部として生まれたことを忘れがちです。そのことに想いを馳せ、限りある命にフォーカスして「今」を生きることが大切です。自分自身の内に広がる宇宙と常に対話し、魂と体が悦ぶ「聖域」を現したいと思っています。

歌に確信がもてるようになり、生きることとアートがより深く結びついたと話すSAORI KANDA。自然と同一する経験を通じて魂は歌い、絵が踊る。個展「生命讃歌-sanctuary-」は、2025年7月12日(土)〜7月24日(木)の期間に開催。

ABOUT ARTIST

SAORI KANDA
SAORI KANDA
SAORI KANDA
Contemporary artist. Her work as a "dance artist," a unique ceremony art performer that involves various expressions such as sound, dance, clothing, fragrance, and food to satisfy the five senses, has been recognized as a performing art, and she has been invited to perform in various parts of the world, including China, Europe, the United States, Kazakhstan, and India. In 2020, she started a series of works with the themes of "Goddess Blossoming" and "Liberation of Sacred Eros." Her works incorporate the importance of facing "sex" as a source of life in the view of life and death, and loving oneself again. She has collaborated with many companies, including NISSAN, Canon, and ALFA ROMEO. Her previous solo exhibitions include the Okaya Museum of Art and Archaeology (2023) and NIPPON GALLERY in New York (2023).

ABOUT EXHIBITION

Exhibition

SAORI KANDA 個展「生命讃歌-sanctuary-」【福岡】

Venue

YUGEN Gallery FUKUOKA
Fukuoka City, Fukuoka Prefecture, Chuo Ward, Daimyo 2-1-4 Stage 1 Nishidori 4F

Dates

2025年7月12日(土)〜7月24日(木)

Opening Hours

11:00 AM – 7:00 PM
Closes at 5:00 PM on the final day only

Closed Days

Every Tuesday

Reception Dates

7月12日(土)

Date of presence

7月12日(土)〜19日(土)

Admission Fee

free

Notes

※在廊日やレセプションについて、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。