ARTIST INTERVIEW

「みんなでひとつの命」安藤圭汰の独占インタビュー

死んでいて生きている。たゆたう生命

安藤圭汰個展「灼熱と腐敗/凍寒と発芽」

<2026年1月24日(土)〜2月16日(月)>

生と死、そのあわいにあるものを探求するアーティスト、安藤圭汰。インドネシア、ベトナム、マレーシアなどアジアを巡り、そこでの出会いに絵画表現、死生観はたえずゆれ動いているという。ボーダレスに交流するなかで創作するものとは? 本人に聞いた。

ーー「生と死、中庸」をテーマに死生観を表現されています。きっかけは?

小学3年生の時におばあちゃんが亡くなったことがきっかけです。死の恐怖から「死ぬって何なんだろう」と強く意識するようになり、その頃から虫の死骸を描くようになりました。

死んでしまった生物は息もしていないけど、物体として存在はしている。死骸を一週間おきに観察して絵を描いていると、ある瞬間に土なのか葉っぱなのかよく分からないような状態になります。(この世とは)違うところに行って、大きな存在になったのかなとか考えたり、自分の感覚を飲み込むための行為が絵だったんだと思います。

絵で表現したいというよりも僕にとって形あるものがすごく大事で、虫が虫であること、生きているものを形あるものとして留めておきたいという気持ちが強かったんです。

ーー東南アジアで精力的に活動されています。自身に与えた影響は?

たくさんあります。学生時代に版画を学んでいたこともあり、それまでは主に白黒表現の作品を制作していました。現実世界には色があり、死後を色のない世界として捉えていたのですが、インドネシアの文化や宗教と出合って見方が変わりました。

たとえば影絵劇のワヤン・クリ。影絵なのに使っている人形には彩色がしっかりされていて、とてもカラフル。「影しか映さない、観客には見えない人形になぜこんなに手間暇をかけているのか?」と聞くと、死後の世界の方が現世よりも解像度が高く、カラフルな世界なんだと。

あの世というものは「この世プラスアルファ」という、それまでと違った世界観を抱くようになりました。白黒の作品は今も作っていますが、二軸で分けるようになりました。

ーー展覧会タイトルについて

「灼熱と腐敗」は、2023年から掲げているものです。暑い国にいると食べ物もすぐに腐ってしまうし、人がヘビに飲み込まれて死んじゃうなんてことが日常で、生死のサイクルが早いと感じました。死んでしまった生物をモチーフとして描いていますが、表現しているのは生命のサイクル。それを感じ取ってもらえればと思い、タイトルに入れています。

抗いようがない自然のなかに暮らしている人たちの考え方はとにかくパワフルで、お金も貯めずにすぐに使ってしまったり、思いついたことはすぐ実行する。ギラギラとした生命力のようなものも表現したいと思いました。

今回はそれに加えて、循環をいったん止める冷凍保存のようなイメージの「凍寒」、そして保存されたものから新たな生命が生まれてくる「発芽」という言葉を加えました。

ーー今回、ご自身の作品だけでなく他の作家の作品も展示します。

コレクションを自分の作品の一部として見せるのは、新しいチャレンジです。僕はいろんな影響を受けやすくて、自分以外の作品や他の作家の考え方を知ることによって変化しています。交流するなかで今の自分が形作られたと思います。

アートスペース(※)を運営するようになり、展覧会の企画をすることも増え、作家のコレクションができてきた。それらも一緒に展示することで、僕のインスピレーションがどう発芽しているのかをお見せしたいと考えました。

僕は作家ですから、自分の絵をいちばん見せたいことに変わりはありません。インドネシアには「ゴトン・ロヨン(相互協力)という言葉があって、みんなで何かをしていくという文化がある。ひとりではできないことができるし、皆で作り上げたものも自分の表現になりうる。アジアの国々に行ってなければ考えつかなかったことです。

ーー自分以外のなにかも含めて作品であると。

アート・イン・レジデンスで滞在したジョグジャカルタでは「ご飯を食べよう」「歌を歌おう」と一緒に何かやることを大切にしています。ヒンズー教やイスラム教には、自分ひとりではなく「みんなでひとつの命」という考え方があるからなのだと知りました。

僕は制作に集中したいし、作品をしっかり見て評価してもらいたいと思っていたので最初はカルチャーギャップを感じましたけど、今では自分の価値観の軸になってます。

ーー印象深い作家さんはいますか?

今回取り上げている作家全員から影響を受けているのですが、エリカ・ヘストゥ・ワイユニというインドネシアの作家がいます。展覧会の搬入の時もずっと絵を描き続けているアート・モンスターみたいな人で、美術館内は絵具を使うことが禁止されているので注意するんですが、やめない。

なぜやめないのかと聞くと、「私は死んでいない。生きている限りは動き続けないといけない。だから(描くのは)やめない」と。そういう熱さだったり内面にあるものが作品にも当然表れている。彼女に限らず、生きることと表現が直結している作家に強く影響を受けてます。

ーー死生観に変化はありましたか?

生死の境というものは、むしろわからなくなってきました。もっと曖昧になっているというか。人間が存在として死んでしまうことは悲しいけれども、空気として漂っていると感じられもするし…いろんな国、いろんな宗教があって、生きていることと死んでいることって人の視座によって変わりうるものだなと。

死のイメージが強い表現をする時もあれば、生命力に溢れた描写をすることもある。僕も表現は大きく振れています。「死んでいて生きている」みたいな、どちらでもないイメージ。絵も死もたゆたっているのかなと思います。

絵を介して人と出会い、その場に新たな空気が流れ込む。人、自然が共生し育むもの。アートも生命もうつろいながら、あり続ける。安藤圭汰の個展「灼熱と腐敗/凍寒と発芽」はYUGEN Gallery FUKUOKAにて、1月24日(土)〜2月16日(月)の期間に開催。

※ alternative space MAA TAKA DON(マー・タカ・ドン)」/2024年3月、安藤とパートナーの安藤紀子が設立したオルタネティブ・スペース。展覧会の他、ワークショップ、絵画教室などを開催している。https://www.instagram.com/maa_taka_don_/

ABOUT ARTIST

Keita Ando
Keita Ando
Keita Ando
Born in Kawasaki, Kanagawa Prefecture in 1992

ABOUT EXHIBITION

Exhibition

安藤圭汰 個展「灼熱と腐敗/凍寒と発芽」【福岡】

Venue

YUGEN Gallery FUKUOKA
Fukuoka City, Fukuoka Prefecture, Chuo Ward, Daimyo 2-1-4 Stage 1 Nishidori 4F

Dates

2026年1月24日(土)〜2月16日(月)

Opening Hours

11:00 AM – 7:00 PM
Closes at 5:00 PM on the final day only

Closed Days

Every Tuesday

Reception Dates

レセプション:2026年1月24日(土)16:00〜19:00

版画体験ワークショップ:2026年2月7日(土)、2月8日(日)各日13:00〜18:00

Date of presence

1月24日(金)、25日(土)、31日(金)
2月1日(土)、7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日)
※各日正午過ぎより在廊予定

Admission Fee

free

Notes

※在廊日やレセプションについて、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。