ARTIST INTERVIEW

「自閉症アーティスト」、GAKUの独占インタビュー

絵は、ことば。アートに障害はない

GAKU 個展 「by GAKU@YUGEN」

<2025年2月7日(金)〜2月24日(月・祝)>

重度の知的障害と⾔語障害を伴う⾃閉症をもつアーティスト、GAKU。理屈からは出てこない鮮やかな色彩感覚と大胆な画面構成の作品は言葉にならない人間の内面世界を感じさせ、観る者の心にダイレクトに訴えかけます。

絵を描き始める以前について。

思春期に入って荒れやすく「高校を卒業したらどうなっちゃうんだろう」という不安しかなかったです。5分も座っていられなかったし、何かに興味を示すこともほとんどなかったので絵を描くとはまったく想像していませんでした。

もうすぐ17歳になろうという時にたまたま岡本太郎美術館に行ったのがきっかけです。そこで岡本太郎の作品を見た翌日に「太陽」と言って、岡本太郎が描くような太陽を突然描いた。見たものを頭の中で再構築し伝えるという情報処理ができることに気づいて、描かせてみることにしました。

絵の描き方はわかっていたのでしょうか?

それまでほとんど描いたことはないし誰かに習えるわけではないので、描きたいように描いて、いろんな画材を試して本人に合うやり方を探っていきました。

最初の一年は画用紙に水彩絵具や色鉛筆で描いてましたが、水彩は乾くのに時間がかかるけど乾かすことを知らなかったのですぐ色を塗り重ねてしまい、ぐちゃぐちゃになって混乱することはありました。そこから乾くまで待つことを学んで、下地そして絵と工程を分けられるようになりました。

描かせていくうちに大胆なブラッシュストロークが持ち味だと感じたので、絵具はアクリルに落ち着きました。キャンバスも小さいものから試しましたが、伸び伸びと描けて良さが出てくるのは大判、特に抽象画はF20より大きいものがいいと思っています。いちばん本人の特性が出せるのはF30、名作だと思えるのは正方形のものが多いですね。

色遣いが印象的です。

(自閉症ならではの)こだわりから本人は一度絵具を使い出したら使い切りたい。一色を4枚ぐらいのキャンバスに一気に塗ってしまい乾かして、翌日に2枚くらいを選んで描いています。

絵具は混ぜると色が濁ってくるので混ぜたがらない。彼の中で明確に欲しい色があるんです。白系ひとつとってもクリームっぽいのか真っ白なのか。描く前に彼の中で色はすべて決まっています。絵が見えているんですよね。また、作品のシグネチャーになっているサインは絵の中では使っていない色を選ぶ。それによって(画面が)締まるので、彼のなかで色分けは厳密にできているんです。

今回の展示作品は2020年からの3年間くらいのものが中心です。

基本的に(モチーフや作風で)全く新しいものは出てこないんです。2017年くらいから絵を描くようになり試行錯誤してようやく技法が安定してきて、作品に対していちばん創意工夫をしていた頃です。今、生まれている作品もこの時期に取り組んだものからのブラッシュアップ版なので、GAKUの原型といえるものが多い。よく使う色や繰り返し描くモチーフがあるなかで、この頃に一度しか描いてないものがあり、これまでに見せていない作品もあります。

抽象的な作品と動物をモチーフとする具象画がありますが、普段はどのように制作しているのでしょうか? 

動物だけを集中して描くとかはないんです。絵は本人が思った時に出てくるもので、どのタイミングで、どういった作品が出るかは予想がつかなくて僕もサポートスタッフも完成するまで分からない。キャンバスを並べて動物と抽象画を同時に描き進めることはしょっちゅうあります。

最初の頃は一日中描いていましたが、描き方を掴んで早く描き上げるようになりました。ここ数年は朝の10時半頃から描き始めて、午前中に作業は終えています。午後は遠足に行ったりして過ごしています。

絵を描き始めて変化はありましたか?

個展をやるようになって、みんなから褒められることで「自分はペインターであり、アーティストなんだ」という軸が出来上がって生きるベクトルが安定しました。言葉でのコミュニケーションは難しいけれど自分の内面の世界を我々に伝える手段を手に入れた。だから、GAKUにとって「絵」は「言葉」なんです。

GAKUの特徴は、作品によってテーマとコンセプトを使い分けられる点。アートをやっている障害者の方は沢山いますが、これを出来る人は少ないと思います。アウトサイダーアートといった言葉で括られがちですが「障害者」といった枠を外し、彼の作品そのものの力、アートとしての魅力で勝負させたいと思っています。

観た人からは「エネルギーが強い」との感想が多く、GAKUの作品はパワースポットのようだと雅典さんは話します。アーティストとして、そして自立した人間としての存在表明であるアート。それは、あらゆる個性を受け入れる慈愛の表れともいえます。個展「by GAKU@YUGEN」は2025年2月7日(金)〜2月24日(月)の期間に開催。

ABOUT ARTIST

GAKU
GAKU
His real name is Sato Gakuto. He was born in Kanagawa Prefecture in 2001. He was diagnosed with severe autism at the age of three, and moved to Los Angeles, USA with his family in 2005 to receive autism treatment. After returning to Japan, he was inspired by the work of Taro Okamoto and began painting at the age of 16. In 2020, he held a solo exhibition in New York, USA. Since then, he has participated in art events and created installations at large facilities both in Japan and abroad. He has collaborated with many brands, including LeSportsac, DIANA, THE BODYSHOP, and GODIVA. He is currently based in the atelier and gallery "byGAKU" in Kawasaki City, Kanagawa Prefecture.

ABOUT EXHIBITION

Exhibition

GAKU個展「by GAKU@YUGEN」【東京】

Venue

YUGEN Gallery
KD Minami Aoyama Building 4F, 3-1-31 Minamiaoyama, Minato-ku, Tokyo

Dates

2025年2月7日(金)〜2月24日(月・祝)

Opening Hours

Weekdays: 13:00-19:00
Weekends and holidays: 13:00-20:00
*Ends at 17:00 on the final day only

Closed Days

None

Date of presence

2月8日(土)、9日(日)

※変更となる場合がございます。最新情報は随時こちらで更新いたします。

Admission Fee

free

Notes

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。