ARTIST INTERVIEW

菅雄嗣 ・増田将大の独占インタビュー

空間と時間をテーマに表現を共鳴させ、新たな展示空間を創り出す

二人展「時のかたち」

<2025年3月15日(土)〜3月31日(月)>

《liminal painting -NOSTALGHIA-#1》菅雄嗣
《liminal painting -NOSTALGHIA-#1》菅雄嗣
《Moment's#122》増田将大
《Moment's#122》増田将大

菅雄嗣と増田将大。現代アートシーンにおいてコンセプト、手法において精妙なイメージを手がけることで注目される両者。同世代、親しい関係にありながら初となる二人展は、コラボレーションしたCG作品での空間演出、文化研究者・山本浩貴氏による理論面でのバックアップなど両者にとって初めての試みが尽くされている。ふたりに話を聞いた。

ーー おふたりの関係性は?

増田:菅さんの方が年齢は上ですが藝大の同級生です。大学には作家志望の人もいれば、そうではない人もいて、現代アートに絵画、インスタレーションと好きの対象も違うなか共通点が多く、ふたりとも30代となった今も作家活動を続けていて、仕事で一緒になることもちょくちょくあります。

菅:(学生時代に)話をしていても、アートの現場、アーティストを目指しているのがわかったし、目指す道が同じだなと感じていました。うまが合うんだと思います。

ーーそれぞれの作品について教えてください。

増田:僕は、自分たちが暮らしている世界も映画フィルムのように瞬間が何層にも重なって形作られているという仮説を立て、実際に撮影した画像を現実空間にプロジェクターで投影することで、一枚の絵の中に現実と過去を重ね合わせ、空間の中で時間を可視化することをテーマに作品を作っています。

菅:数年前からネット・ミームとなった「リミナルスペース」に関心があり、そこから着想した作品を作ってます。もともとは、エドワード・ホッパーや(ヴィルヘルム・)ハンマースホイのようなモチーフに意味を持たせない、物語性を剥ぎ取った空間を描きたいと思っていて、バブル期の建築物のような無人で哀愁のあるようなスペース、知っているどこかのようでどこでもない空間を描いています。

ーー空間と時間に対するアプローチの相違は今回の展覧会で明確になっています。

菅:増田君は空間で時間の蓄積を表現し、私は物語性を排除した空間を描いている。そうした共通点と違いを今回、テキストをお願いした山本(浩貴)さんに非常にうまくまとめていただき、タイトルは山本さん含めて3人で話しあっていくなかで決まりました。クブラーの『時のかたち』からの引用です。

増田:作品を見れば違いはわかると思いますけど、「時間」に関しての対比は山本さんに入ってもらい言語化してもらって明確になりました。自分たちだけでは難しかったかもしれないです。改めて「そうだなよな」と感じてます。

ーー長い付き合いながら、初めての二人展。どのような話し合いをされたのですか?

菅:せっかくふたりでやるのであれば、ただ絵画作品を羅列するような展覧会は避けたいとは話してました。名前を掲げただけのグループ展にはしたくないと。YUGEN Galleryの下見をした時、私たちが好きなSF、映画『2001年 宇宙の旅』のようなシンメトリーがすごくきれいな「絵になる空間」だと感じたんです。そこから美術の展覧会場自体を作品化するというコンセプトを考えました。

ーーコラボレーションとしてCGを用いた映像作品は見所です。

増田:菅さんがトーカス(※)の個展で虚構のイメージを映し出したプロジェクション作品を発表して共通するポイントが増えてきて、ふたりでひとつの作品を作れるんじゃないかとは話していたんです。CG上でモチーフを作る菅さんの作風と時間が重なり連続していく僕の作風をかけ合わせた作品のイメージはすぐできましたね。

菅:YUGEN GalleryのスペースをCG上で作り上げ、それを会場内に映し出します。ギャラリーが空間内で連続していき、そこでの擬似的な時間の変化を表現したもので・・・こういう風に喋ったり文字にするとわかりにくいかもしれませんが、“出オチ”のような作品なんです(笑)。展覧会って美術の知識がないと置いていかれることが多いのですが、今回は会場に入った瞬間に「そういうことね」って結構わかりやすい展覧会になると思っています。

増田:ふたりとも絵画出身なので、ペインティング一点一点をきちんと見せたいっていうのはあり、それぞれの作品ではそうしつつ、観に来られる方がインスタレーションで空間全体を直感できる演出になっているところは、僕たちにとっても初めての試みです。

ーー本展によってそれぞれの作品の解像度も高まります。

菅:僕らはインストーラーでもあって、他の作家の展覧会のコーディネートもしているので、展覧会を作ることも作品制作もいつもと変わりません。「時間」に関するアプローチの違いだけでなく、時代性といった同時代の作家の特徴みたいなものが見えてくるところは見所です。会場が出来上がってみないとわかりませんが、お客さんと一緒になって、これまでとは別の感覚が生まれることを期待してます。

増田:キュレーションとなると歴史上の作家との比較であったり、美術史の中でどう捉えられるかという視点になりますが、同じ時代に生き、同じようなものを見て育ってきた作家の違い、そして微妙な類似点が見えるのは、それぞれがやる個展と違う面白さがあると感じています。

本展タイトルの典拠となった著作でジョージ・クブラーは、「精妙な絵画」はシグナルを発しているとも述べている。菅雄嗣、増田将大の作品から発せられるシグナル。その間に現れる空間、そして時間とは? 二人展「時のかたち」は、3月15日(土)〜3月31日(月)の期間にYUGEN Galleryで開催。

※ ACT(Artist Contemporary TOKAS)Vol.6「メニスル」@トーキョーアーツアンドスペース本郷 アーティスト/大庭孝文、菅雄嗣、ヨフ(大原崇嘉、古澤 龍、柳川智之)2024年2月24日(土) 〜 2024年3月24日(日)に開催。

ABOUT ARTIST

菅雄嗣
菅雄嗣
Yushi Suga
すが・ゆうし/1988年長崎県生まれ。2017年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了。主な展示は主な展示はTOKYO ARTS AND SPACE「メニスル」(2024)、MAHO KUBOTA GALLERY個展ILIMINAL」(2023)など。受賞歴は「第4回CAF賞」齋藤精一賞(2017年)ほか。コレクションは「​JAPIGOZZIコレクション」「佐々真コレクション」に作品収蔵。MAHO KUBOTA GALLERY所属。
増田将大
増田将大
Masahiro Masuda
ますだ・まさひろ/1991年静岡県生まれ。2020年東京藝術大学博士後期課程修了。受賞歴は「TERADA ART AWARD」入選(2015年)、「東京藝術大学上野芸友賞」(2017年)他。雑誌「美術手帖」(2016年12月号)において「ニューカマーアーティスト100」選出。コレクションは「公益財団法人現代芸術振興財団前澤友作コレクション」、「リッチモンドホテルプレミア東京スコーレ」に作品収蔵。

ABOUT EXHIBITION

展覧会

菅雄嗣 × 増田将大「時のかたち」【東京】

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31  KD南青山ビル4F

会期

2025年3月15日(土)〜3月31日(月)

開館時間

平日:13:00〜19:00
土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

在廊日

3月15日(土)、16日(日)

入場料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。