ARTIST INTERVIEW

北山雅和独占インタビュー

「声を上げることをためらわない」

北山雅和 個展「TYPOGRAFFITI 4-5」

<前期 2025年12月13日(土)〜12月25日(木)/後期 2026年1月7日(水)〜1月19日(月)>

北山雅和の作品《TYPOGRAFFiTi》から感じるのは、言葉は武器ではなく、花や水、光といった生きる糧であること。2015年から掲げてきた反戦のメッセージ「NO WAR」。その想いについて本人に聞いた。

ーー社会性のあるメッセージをモチーフにされています。きっかけは?

東日本大震災後、反原発のデモが活発になって、僕も時間があれば頭数を増やす意味で参加していました。それが習慣化していって自分の中でも声を上げる気持ちが芽生えてきたんですよね。そこから2015年の安保法制へのデモにもつながって、20歳そこそこの若い学生たちが名前を名乗り、声明発表している姿がすごく印象的だった。スピーチの内容も素晴らしくて、言葉に熱気が乗っていて心を動かされました。これがメッセージだな、と。

スピーチをしようとは思わなかったのですが、僕に出来ることは視覚表現なわけで、それによって社会に問うてみることはできないのか。ジョン・レノンの「WAR IS OVER!」やロバート・インディアナの「LOVE」のようなメッセージそのものが作品となって、自分ならではの表現って?そんなことをデモに参加するなかで考えていました。

ーー言葉を立体作品にするアイディアはどこから?

ジャケットデザインでは工作みたいなことをずっとやってきましたし、以前から作品にしようと思うのでもなくタイポグラフィの延長でアクリルの立体物を試作してはいたんです。その手応えがすごく良かったものの「いつか出来ればいいかな」くらいの気持ちで寝かせてました。

2014年のパリ・コレでシャネルのショーの最後にモデルたちがプラカードを掲げてランウェイを歩いたことがあったり、デモに参加していくなかで、それまで手書きだったプラカードにデザイン性のあるものが目につくようになり、寝かせていた立体作品のアイディアとリンクしました。

最初はアクリルを使ったのですが、コンセプトとしては言葉は書けば見えますけど、話している時は実体が見えない。透明なアクリルの立体物も角度によって輪郭や陰影に変化が出るところが言葉のありように近いなと考えました。

ーー代表作である《NO WAR》について

安保法制デモのためにプラカードを作ろうというところから始まり、自分にとってリアルでシンプルな言葉は何だろうと考え、「JUST PEACE」や「NO WAR」が出てきました。当時、「NO WAR」は周りの人からは「強い言葉」だと言われましたね。

反戦というと強迫的な言葉のように捉えられるのは、ことなかれ主義というか自ら杭は出さないようにする日本独特の傾向があるなと感じました。戦争という言葉のインパクトは強いけど、「NO WAR」自体は強い言葉ではないと思うんです。

多くの人は「反〜」を掲げる行動を起こしたくない。親しい人からも「なんで、わざわざ反戦を訴えるの?」と言われましたが、僕らが生きていく上で危機的な状況に陥らないように行動を起こすのであって、「NO」の声を上げることをためらってはいけないんじゃないかと思いました。

ーー金属の質感、サイズは言葉の迫力となっています。

素材にアルミを使い出したのは2021年から。東京と高松に拠点があるCENTERというギャラリーから反戦を訴える常設展示をしたいと依頼され、今年に入り壁一面を埋めるような巨大なサイズの《NO WAR》を制作しました(※1)。今回出しているものはそれとサイズは同じで、エディション2といった感じです。

形状としては、フラットに見えているんですけど文字が起き上がってくるようなイメージを意識してます。ある面が立ち上がってくると、もう片面は影となって彩度が落ちていくようにして、言葉の意味合いが入れ替わるようなところを表現しています。横から見てジグザクのような形に、今を生きるみんながあがいていることを表せるとも思いました。

アルミは加工しやすい材質で「立ち上がる言葉」というコンセプトを造形表現するのに合っていて、表現が広がったように感じています。

ーー「NO WAR」の意味は重くなっています。掲げて10年。感想は?

反戦を訴える方はアートの分野では沢山いますが、グラフィックデザイナーではクライアントからそっぽを向かれる恐れもあって踏み込めるものではない。でも、今の若いデザイナー達には、そういった壁を取り払って動いている人もいます。ミュージシャンが行動を起こす時に僕の作品を掲げてくれたり(※2)、流れは出来てきていると感じます。

一方でスパイ禁止法案というものも上がってきたり、過激なことをやっているわけでもない僕らのような人たちでさえ反政府的な存在として捉えられかねない状況になっている。行動を促すというより、点いた火を消してはいけないと感じます。ありがたいことにやってきたことが認知されてきているので、続けることがこれまで以上に重要だと考えてます。

ーーアートとデザインについて。

アートとデザインを分ける考えはなくて、その間にずっといたい。反戦を訴えると「もっと楽しい感じで出来ませんか」と意見をもらうこともあるのですが、反戦に限らずメッセージを掲げることは日常と乖離しないと思うんです。だから、ファッションとして身につけたり、いろんな分野とクロスオーバーして多くの人が受け入れやすい、開かれたものにしたい。その点ではデザインは有効であり、デザインによって日常に潜り込ませられると思っています。

一方で、アートとデザインの間でバランスをとっているところは(作品の)出力が弱いともいえます。アート一本でやっている方からすれば「所詮、商業グラフィックじゃねぇか」と。覚悟という点で負い目を感じなくはない。ここは自分でも問い続けていくことになります。

ーー葛藤があるのですね。

もちろん楽しんでやっているのですが、苦しい時もあります。社会情勢も含めて。自分はこれでいいんだろうか?ヘタすると何も言えなくなるんじゃないか。作品の見栄えは抑制されていますが、僕にとっては叫びです。「どうしよう!」っていう。

「TYPOGRAFFiTi 4」(2023年)あたりから、観ていただいた方がご自身の感情と作品を結びつけて共感してくれているのを肌身で感じてます。10年経って《TYPOGRAFFiTi》という作品がスローガン然としていたものから人に寄り添うものになった。僕自身もあがいているからなのかなと思います。

北山雅和が掲げる言葉。それは、今でいうところの「刺さる」のではなく、カーディガンを羽織るように、そっとまとう言葉。「TYPOGRAFFiTi 4」(2023年)、「同・5」(2025年)の作品から構成する個展「TYPOGRAFFiTi 4-5」はYUGEN Gallery FUKUOKAにて、12月13日(土)〜12月25日(木)、2026年1月7日(水)〜1月19日(月)の期間に開催。

※1 「TYPOGRAFFiTi5  -letters, words, voices-」(東京・ALにて2025年10月29日〜11月16日に開催。)で初出。本展「TYPOGRAFFiTi 4-5」でも展示。

※2 GEZANが主宰するレーベル〈十三月〉の呼びかけにより開催した反戦集会「No War 0305 Presented by 全感覚祭」(2022年3月5日)、その直後のGEZANの日比谷野音音楽堂でのライブ「独炎」(2022年3月27日)など。

ABOUT ARTIST

北山雅和
北山雅和
Masakazu Kitayama
1967年兵庫県神戸市生まれ。コンテムポラリー・プロダクションを経て1998年にHelp!設立。フジファブリック、OKAMOTO’S、cero等のCDジャケット・デザインを中心にJ SPORTS 「Foot!」、雑誌「GINZA」等のアート・ディレクション、ロゴ・デザインを手がける。2007年、作品集 「LiGHT STUFf」(第11回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品選定)。NHK連続テレビ小説「カーネーション」タイトルロゴ・デザイン。「CHANGE」東京TDC賞入選(2017年)など。

ABOUT EXHIBITION

展覧会

北山雅和 個展「TYPOGRAFFITI 4-5」【福岡

会場

YUGEN Gallery FUKUOKA
福岡市中央区大名2-1-4 ステージ1西通り4F

会期

前期/2025年12月13日(土)〜12月25日(木)
後期/2026年1月7日(水)〜1月19日(月)

開館時間

11時〜19時
※最終日のみ17時まで

休館日

毎週火曜日
※ただし、会期中に臨時休業日があります。詳細は注意事項をご確認ください。

レセプション日程

【トークイベント】

TALK1:2025年12月14日(日)15:00〜
TALK2:2026年1月14日(水)18:30〜

在廊日

前期/12月13日(土)、12月14日(日)

後期/1月14日(水)、1月15日 (木)

入場料

無料

注意事項

※2025年12月26日(金)〜2026年1月6日(火)は冬季休業となります。
※在廊日についての最新の情報はギャラリーのInstgramをご覧ください。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。