EVENT REPORT

【開催レポート】蓮井幹生個展「十七の海の肖像」トークイベント

現代アートギャラリー・YUGEN Gallery FUKUOKAにて、蓮井幹生の個展「十七の海の肖像」のスペシャルイベントとしてトークイベントを行いました。

本展では、2023年末から2025年にかけて約1年半にわたり、建設中の青森県大間原発を除く日本国内すべての原子力発電所を訪れ撮影した海景作品17点を公開します。海に立地する原発は画面外に置かれ、波や光など、海の表情のみが捉えられています。原発の存在が孕む“見えないリスク”を静かに提示し、現代の風景に潜む複雑な現実を浮かび上がらせます。

「自然の摂理」をテーマに、蓮井幹生が30年以上にわたり取り組んできたアートワーク。ストレート・フォトグラフィを標榜する蓮井にとって“見えない”写真は画期といえる作品となり、注目です。

スペシャルイベントとして開催されたトークイベントでは写真家・喜多村みか氏を迎え、蓮井幹生との対談が行われました。

本対談では、「原発」や両者の作品に共通する「自然と文明の関係性」という社会的テーマが取り上げられ、さまざまな視点から語られる場面が多く見られました。

蓮井は、今回の展示「十七の海の肖像」に込めた想いを語りました。「海は見えないものが映る」と述べ、一見穏やかに見える海の風景の中にも、目には見えない“何か”が確かに存在していること、そして「写真とは、過去を記録するだけでなく、未来を映す力も持ち得るのではないか」と、写真表現の可能性について語りました。

喜多村は、長崎や広島といった被爆地での取材経験に触れ、社会的なテーマを作品として提示することの意味、そしてそれに伴う覚悟について話しました。写真家として“真実”にどう向き合うかという問いは、来場者の心にも深く響いたようでした。

対談後には質疑応答の時間が設けられ、ご来場者の皆様から作品についてご質問が寄せられました。
お二人にはそれぞれの立場から丁寧に回答いただき、写真が持つ表現力と社会性について、あらためて考えることができる貴重な時間となりました。

写真というメディアがもつ、静かでありながら確かな力。そして、“見えないもの”をいかに写し取るかという永遠の課題――。今回の対談は、作品と鑑賞者のあいだに、新たな視点や感覚を立ち上げる、貴重なひとときとなりました。

ABOUT ARTIST

蓮井幹生
蓮井幹生
Mikio Hasui
写真家。1955年東京都出身。アマチュア写真家の父親の影響で幼少の頃から写真を始める。明治学院大学社会学部社会学科を中退後、アートディレクター・守谷猛に師事。アートディレクターとして広告やレコードジャケットを多く手がける。30歳の頃より写真を独学し、1988年の個展開催をきっかけに写真家となる。新潮社の雑誌『03』はじめ著名人のポートレイト作品で注目を集め、ファッション、ドキュメンタリーと幅広い分野の撮影を手がける。2000年頃からはムービー撮影も行い、PVやCMの作品多数。作品はフランス国立図書館、東京工芸大学写大ギャラリーに収蔵されている。

ABOUT EXHIBITION

展覧会

蓮井幹生 個展「十七の海の肖像」【福岡】

会場

YUGEN Gallery FUKUOKA
福岡市中央区大名2-1-4 ステージ1西通り4F

会期

2025年8月23日(土)〜9月15日(月・祝)

開館時間

11時〜19時
※最終日のみ17時まで

休館日

毎週火曜日

レセプション日程

アーティストトーク:8月23日(土)14:00〜15:00

在廊日

8月23日(土)

入場料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。