大河紀 個展「食卓」【東京】

2025年10月25日(土)〜11月16日(日)

YUGEN Galleryは、2025年10月25日(土)〜11月16日(日)の期間、大河紀の個展「食卓」を開催いたします。

Exhibition Information

Venue

YUGEN Gallery
KD Minami Aoyama Building 4F, 3-1-31 Minamiaoyama, Minato-ku, Tokyo

Dates

2025年10月25日(土)〜11月16日(日)

Opening Hours

Weekdays: 13:00-19:00
Weekends and holidays: 13:00-20:00
*Ends at 17:00 on the final day only

Closed Days

None

Admission Fee

free

Notes

※在廊日やレセプションについて、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

Exhibited works images

《FAMILY》
《FAMILY》
《FAMILY》
《FAMILY》

Statement

異物との出会いーFAMILY

松の木を思わせる形象が座敷の前景にせり出し、その間隙に流れ込む青い浮遊体。画面にはグラフィティパターンや無数の円が描かれている。異なる時間軸や風景を一画面に混在させ、そこに静謐ながら立ち込める躍動感。浮世絵の概念を現代の感性で表現する大河紀。

生と死の境界に立つ快楽主義

本展は、既成概念の外にある「異物」との出会いによってなされる自己形成がテーマ。自らと違う価値観を噛み、飲み込み、腹に落とすうちにアイデンティティの輪郭が帯びることを表現した作品約30点で構成します。

大河は若くして母を亡くした経験から「生と死は表裏一体」であるとし、死を遠ざけるのではなく、その不可避性を正面から見つめ、生きることを徹底的に肯定する考えに至ります。「憂き世」を「浮き世」と捉え、生きるなら享楽的に生きようとする浮世絵の快楽主義をインスピレーションに「生と死の境界」をテーマとした作品を制作しています。

そこから今年、新たなシリーズ作品《FAMILY》を発表。ファミリーとは血縁に限定された枠組みではなく、異なる文化や宗教、たった一回の出会いも含めた関係性の総体として示されます。既成概念の外にある「異物」との出会い、有象無象との関係性の中で現在の自分の存在が形作られているとし、大河の死生観を更新したものになります。

絵のアウラ、生きるリアリティの追求

作品には藍摺、型の繰り返しといった江戸絵画の描法の影響が見られます。金地に見える背景は、金箔を実際に貼るのではなく色彩によって光の概念を表現。これは「描かれざるもの」を気配として描く江戸絵画にもあった概念の現代的展開と捉えることができます。

浮世絵、そして琳派に代表される血筋や師弟関係をもとに江戸時代に形成された流派組織ーいわば日本美術のFAMILYーの様式美に目配せをしつつ取り入れられるアブストラクトペインティング。日本美術の系譜を感じさせつつグラフィカルな構成力が結びついた独自のスタイルは見所です。

色地は丹念に塗り、その上層は即興的に。強靭な筆触と絵具の厚み、マチエールに浮かび上がる生命感。制御と偶然、秩序と混沌といった異なるもののせめぎ合いを画面に定着させる過程に大河が追求する死生観が潜んでいるといえ、絵画におけるアウラを追求し続ける作家の苛烈さ、描くことでしか得られないリアリティが全開。キャンバスは異質なものを受け入れることから始まる作家自身の自己拡張の場であり、伝統と現代をつなぐ新たな表現の実験場として現れています。

大河の作品は現代社会が直面する多様性の課題とも響き合います。異なる価値観や文化に触れることはしばしば恐怖や違和感を伴うもの。しかし、それを一度は味わってみる。食卓に上がるものには重く厚い質感で、越えられない現実もあるでしょう。しかし、食卓についてFAMILYとして迎え入れる。大河紀の画面に表れるのは、寛容の精神としての快楽主義といえます。

人は出会いによって、少しずつその輪郭を変えていく。

私はその変化を「FAMILY」と呼び、異物との出会いと定義した。

今回の展示「食卓」は、その延長線上にある。

自分とは異なる概念を口に運び、咀嚼し、飲み込むこと。

恐れや抵抗を伴いながらも、味わってみなければ何も始まらない。

赤子のように、世界を確かめるように食べる。

未知を受け入れる勇気の先にこそ、自己を更新する変化がある。

見慣れた形が揺らぎ、関係が変容し、あらたな像が立ち上がる。

私はその揺らぎを、偶発的に重ねられた有機的な塗りと、

像を浮かび上がらせる無機的な線とのあいだに定着させてきた。

その繰り返しが積み重なる場こそ、ここであり、食卓である。

そこでは、異物と向かい合うことからすべてが始まる。

生と死を重ね持つ快楽主義が、ここには息づいている。

大河紀

本展は会期終了後、YUGEN Gallery FUKUOKAに巡回展示いたします(11月29日〜12月11日)。

About sales of artworks

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

Taiga period
Taiga period
Nori Okawa
Born in Okayama Prefecture in 1991. Graduated from Tama Art University. While actively presenting his work both in Japan and overseas, he has also collaborated with many advertising and apparel companies. He has received numerous awards, including the HB File Special Award, the 22nd Graphic 1_WALL Encouragement Award, and the runner-up prize at Independent Tokyo 2025. His major artworks include Miu Miu, HERMES, and TENGA.