EVENT REPORT

[Event Report] Reception for Mikio Hasui's Photo Exhibition "Beauty Resides Even in the End of Decay"

現代アートギャラリー「YUGEN Gallery(東京・南青山/運営:株式会社ジーン)」にて、2025年1月19日(日)に蓮井幹生写真展 「朽ちゆく果てにも美は宿る」レセプションを開催いたしました。

本展は、2024年元日に発生した能登半島地震によって割れた陶器をそのままの姿で記録した写真作品を中心に構成され、当日は写真家の蓮井幹生によるトークセッションに加え、オーボエ奏者・三輪あかね氏、ダンサー・上村なおか氏による特別パフォーマンスが披露されました。

登壇者の3名は、それぞれ異なる形で震災や社会的困難と向き合い、各自の表現活動を通じて支援を行うという共通の思いを抱いています。蓮井幹生は以前、東日本大震災直後から東北の被災地を訪れ、石巻を中心に復興支援を続けてきました。写真を通じて震災の記憶を伝える活動を行い、その経験が本展にも大きく影響を与えています。上村なおか氏は金沢出身で、能登地震時には帰省中に被災。三輪あかね氏は関西出身で、阪神淡路大震災の経験を持っています。このレセプションは、彼らの「できることで支援する」という理念を共有する場ともなりました。

トークセッション:「損傷した陶器に宿る美」

トークセッションでは、蓮井幹生と錦山窯の四代 吉田幸央氏、吉田るみ子氏が対談し、本展のコンセプトについて語りました。

本展に展示されている作品は、110年以上の歴史を持つ石川県小松市の九谷焼の窯元・錦山窯で作られた名作の陶器を、震災によって損傷したままの状態で写真に記録したものです。錦山窯は能登半島地震において建物の大きな被害は免れたものの、三代にして人間国宝・吉田美統をはじめとする名工らによる作品が損壊しました。

通常であれば修復されるはずの作品を「今在る姿」として受け入れたのは、陶芸工房・錦山窯の四代 吉田幸央氏、吉田るみこ氏でした。壊れたものを単なる損傷としてではなく、新たな価値を持つものとして捉える感性が、蓮井の写真表現と共鳴し、作品として結実しました。

「壊れたものをどう扱うか」という問いは、単なる芸術的視点にとどまらず、震災を経験した人々にとって切実な問題でもあります。壊れたものを否定せず、そこに美を見出すことの意味が、本展を通して深く問い直されました。

パフォーマンス:「呼吸が生み出す祈り」

トークセッションの後、オーボエ奏者・三輪あかね氏とダンサー・上村なおか氏によるパフォーマンスが行われました。オーボエの音とダンサーの動きが、互いの呼吸を感じながら紡がれ、心地よい緊張感と調和を生み出しました。

特に印象的だったのは、両者が向き合い、静かに呼吸を合わせるシーン。壊れたものを見つめながらも、そこに新たな可能性を見出すという本展のテーマと、震災あるいは震災復興を経験した3名が支援活動を通じてつながる背景が重なり合い、深い感動を与えました。

「朽ちゆくものにも美は宿る」という感覚が、音と身体の表現を通じて鮮明に表されました。これは単なる演奏や舞踊ではなく、震災を経験し、それでもなお前を向く人々の「祈り」のようなパフォーマンスでした。

本レセプションは、震災によって生まれた新たな視点と、そこに宿る美を見つめる機会を提供しました。損傷した陶器の記録、対話、そして音と身体の表現が交錯することで、来場者それぞれの心に深く響く時間となったことでしょう。

盛況のうちにレセプションは終了いたしましたが、本展覧会は2月2日(日)まで開催しております。また、本展は2025年3月にYUGEN Gallery FUKUOKA、石川県小松市・ギャラリー嘸旦(日程未定)への巡回開催が予定しています。損傷した陶器が映し出す美と、それに込められた想いをぜひ会場でご覧ください。

なお、今回の展覧会は能登半島地震復興支援のために企画した特別展となり、作品の売上の一部は復興支援に寄付いたします。皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

ABOUT ARTIST

Mikio Hasui
Mikio Hasui
Mikio Hasui
Photographer. Born in Tokyo in 1955. Influenced by his father, an amateur photographer, he began taking photographs at a young age. After dropping out of Meiji Gakuin University's Faculty of Sociology, he studied under art director Takeshi Moriya. As an art director, he has worked on many advertisements and record jackets. He taught himself photography from the age of 30, and became a photographer after holding a solo exhibition in 1988. He attracted attention with his portraits of celebrities in Shinchosha's magazine "03," and has worked in a wide range of fields, including fashion and documentaries. Since around 2000, he has also been shooting movies, producing many promotional videos and commercials. His works are in the collections of the National Library of France and the Shadai Gallery at Tokyo Polytechnic University.

ABOUT EXHIBITION

Exhibition

Noto Peninsula Earthquake Reconstruction Support Exhibition: Mikio Hasui + Kinzan Kiln Collaboration Exhibition "Beauty Resides Even in the End of Decay" [Tokyo]

Venue

YUGEN Gallery
KD Minami Aoyama Building 4F, 3-1-31 Minamiaoyama, Minato-ku, Tokyo

Dates

Saturday, January 18, 2025 - Sunday, February 2, 2025

Opening Hours

Weekdays: 13:00-19:00
Weekends and holidays: 13:00-20:00
*Ends at 17:00 on the final day only

Closed Days

None

Date of presence

to be decided

Admission Fee

free

Notes

*Please note that the dates and opening hours may change without notice depending on the situation.