ARTIST INTERVIEW

「リアルで理想の女の子」Facesの独占インタビュー

自分が描く女の子が、いちばん好き

グループ展「Faces」

<2025年7月26日(土)〜8月13日(水)>

精細な描写と情感にあふれるガールズイラストレーションで定評のある4名が顔を合わせる展覧会「Faces」。女性を描くことについて、参加作家のリチャード君と本展キュレーター・野間博尊に話を聞いた。

ーー作家は全員女性。描くのは女性の表情。

野間:個人的に女性作家の線やタッチには男性には出せない繊細さがあり、顔を描くにも揺らぐ感情というか、その時の気持ちがダイレクトに表れるのが面白いと感じていました。4名は福岡や佐賀を拠点に、ずっと女性のポートレートを描いていて、特に手の表現がとても美しい。女性だからこそ気づく細かな部分の描写力に優れる作家たちです。彼女たちの作品が「顔を合わせる」ことで、今の時代の感覚が展示空間に流れるのではないかと考えました。

ーー九州出身、女性がモチーフなど作家としての共通点も多いですが、つながりは?

リチャード君:急行(2号)さんとNahさんは、わりと会いますし一緒に展示をやったこともあります。chikameさんはSNS等でも作品は存じ上げてますが、ほぼ初めましてですね。みなさん、素敵な絵を描かれていて影響受けてしまうのであまり観ないようにしてます(笑)。

ーー女性を描くのはなぜですか?

リチャード君:小さい頃から絵を描くことが好きでしたけど、女の子ばかり描いてました。漫画やアニメにはかなり影響を受けて、漫画家になりたいと考えていたこともありましたけど、いろいろ描きたいというより私が表現したいのは女性なんですよね。そのことについてなんでだろうと考えることもあるのですが、答えは出てないです。

単純に女性は髪型やファッションの変化が多いので描くのは飽きないし、いろんな表現ができるんですよね。かわいい人物を描くのも見るのも好きで、それがずっと続いている感じです。憧れの女性を描くなかで自分の感情を表現しています。

ーーどんな感情を描いているのでしょうか?

リチャード君:私は気分が落ち込んでいる時に絵を描いています。どこに自分の気持ちを向けたらいいのかわからず、言葉にするのも難しくて、ひとりで不安になったり悲しくなったりすることがあって、そういう感情を涙だったり、いろんなモチーフを掛け合わせて表現したいと思っています。絵が完成すると気分も上がるので、描くことが救いにはなっています。

絵を描くことは、ネイルや化粧をするのと感覚的に近いかもしれない。ファンデーションを塗ったり、まつ毛をひとつ一つきれいに描くのと同じ楽しさがあります。だから、爪の先まで結構こだわって描いてます。

野間:気持ちが上がっていても下がっていても、4人とも思いが強い時に絵を描いているのは共通していると思います。

ーー描いているのは自分自身?

リチャード君:うーん、それもよく聞かれるのですが、自分の理想の女の子を描いていて自分自身を描いているということはないです。でも、おのずと出ているんでしょうね。Nahさんはポップでかわいい方で絵と雰囲気は似てるなって感じますし、他の方も同じで絵にその人が表れていると思います。

野間:髪型をこうしたいとか表面的なことではなく、世代を描いているのかなとも思います。そのあたりの4人の感覚がクロスオーバーして、どういう風にみなさんに観てもらえるのかは楽しみですね。

リチャード君:今回は画面に大きく顔を描いた作品ばかりですが、ひとつ一つ表情も雰囲気も違う絵にはなっていると思います。泣いてるイコール悲しい、と捉えてもいいですけど、色とか細かい部分にこだわって描いているので「絵の視線の先に何があるのかな」と観る人がいろいろ想像してもらえるといいなと思います。

デジタルとアナログ、両方の作品を作っていますが、今回展示をする作品は主にアナログです。絵にもっと向き合いたいと思うところもあり、2年前からアクリル絵の具でも描くようになりました。iPadで下書きをして配色も決めてから、キャンバスに転写して色をつけています。デジタルと違って修正は難しいし、描く感覚も違いますが楽しいですね。

最近は男性もメイクやネイルを楽しんでいて、性別にとらわれないファッションも普通になったりと時代の流れは意識してます。それとともに自分自身も変化していくわけで、この先描きたいものもどうなるかはわからないですけど、今のところは20代くらいの理想の女の子を描くことが楽しい。自分の描く女の子がいちばん好きです。

化粧、ファッションと装うことは隠すことではなく、むしろ自分自身をさらけ出すこと。絵を描くことに通じるものがあるという。素直に愛らしく「女の子を描きたい」という想いは、他ならぬ「わたし」への希望だ。

グループ展「Faces」は、2025年7月26日(土)〜8月13日(水)の期間に開催。

ABOUT ARTIST

急行2号
急行2号
kyuko2go
福岡で創作活動を開始。のちに佐賀、東京、大阪で個展を開催。 2022年に初の画集『Shimmer 急行2号作品集 ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK』を、2024年に著書『パーツ別でバリエーションとプロセスがわかる ガールズイラストで生かせる光の使い方』を発売。 マクドナルド『McCafé #これが私の生きる道 いちご練乳フラッペ(2025年)』などプロモーションや企業とのコラボレーション企画、装画、webtoon制作にも多数携わる。 個人制作ではデジタル・アナログの技法を問わず「光の表現」にフォーカスしたものを多く描く。2025年5月、YOD TOKYOにて個展『初恋 First Love』を開催。
chikame
chikame
福岡出身イラストレーター。 創作は女の子を中心に植物などのモチーフを取り入れ、瞬間に現れる生命の華やかさや儚さ、美しさを表現します。 強い瞳でインパクトのあるイラストを描きます。 企業の広告イラストやアーティストのジャケットイラスト、グッズイラストなど制作。
リチャード君
リチャード君
Richardkun
福岡県在住。幼少期に漫画やアニメの影響を受け絵を描き始める。2018年からデジタル作品を中心としたイラストレーター業、アーティスト活動を本格的に開始。 現在は音楽アーティストの配信アートワークやMVイラストを手掛ける他、2023年からアクリル画の作品制作と展示も行う。 作品制作において、現実に即していない鮮やかな色を各所に用い、絵にしか出来ない感情や空気感の表現に挑戦している。
Nah
Nah
1996年生まれ。福岡県在住。 どこか毒気を感じる大胆なタッチとポップなパステルカラーが特徴的。 ブランドコラボや広告ビジュアル、MVデザインなどデジタルの分野で幅広く活躍するほか、自身が得意とするアナログ作品の制作にも力を入れており、展示会も精力的に行なっている。

ABOUT EXHIBITION

展覧会

グループ展「Faces」【福岡】

会場

YUGEN Gallery FUKUOKA
福岡市中央区大名2-1-4 ステージ1西通り4F

会期

2025年7月26日(土)〜8月13日(水)

開館時間

11時〜19時
※最終日のみ17時まで

休館日

毎週火曜日

レセプション日程

7月26日(土)16:00〜19:00

在廊日

急行2号   :未定
chikame  :7月26日(土)、27日(日)      
リチャード君:7月26日(土)、27日(日)
       8月2日(土)、3日(日)、9日(土)、10日(日)       
Nah    :未定

入場料

無料

注意事項

※8月12日(火)は開廊いたします。
※在廊日について、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。