C.P.S(Complex Seoul) グループ展「COMPLEX」【福岡】

2025年6月12日(木)〜6月26日(木)

YUGEN Gallery FUKUOKAでは2025年6月12日(木)〜6月26日(木)の期間、C.P.S(Complex Seoul) グループ展「COMPLEX」を開催します。

Exhibition Information

Venue

YUGEN Gallery FUKUOKA
Fukuoka City, Fukuoka Prefecture, Chuo Ward, Daimyo 2-1-4 Stage 1 Nishidori 4F

Dates

2025年6月12日(木)〜6月26日(木)

Opening Hours

11:00 AM – 7:00 PM
Closes at 5:00 PM on the final day only

Closed Days

Every Tuesday

Reception

未定

Date of presence

6月12日(木)、13日(金)、14日(土)、15日(日)

Admission Fee

free

Notes

※在廊日やレセプションについて、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

Exhibited works images

Statement

時代を乗り越えるCOMPLEX

C.P.S(Complex Seoul)はソウルを拠点に活動するアート・コレクティブ。メンバーは流動的で、本展に参加するのはジュ・ジェボム(Joo Jaebum)、275C(Ichiro.C)、キム・ドンホ(Kim Dong-ho)、ソル・ドンジュ(Seol Dongju)、イ・ドンフン(Lee Dong Hoon)の5名。昨年から対話を重ね関係性を築き、展覧会のコンセプトを練ってきました。キュレーションを手がけるのは福岡・平尾のギャラリー〈other〉です。

昨年9月、IWATAYA LIFE with Art(岩田屋 本店)で開催したグループ展「Complex Fukuoka」に続いて「COMPLEX=複雑」をテーマとしつつ、今の時代に個人が抱える「劣等感」にも目配せをし絵画、立体、グラフィック、映像作品と多様なメディアで構成。11点の作品によるインスタレーションとなります。

ジュ・ジェボムは記憶や感情、経験が個人を形づくるとし、そこから個人の関係性が連続し世界が構成されていく様態をピクセル画で表現しています。

275Cは、ビンゴカードや商業ノベルティをモチーフにした作品を制作。現代において多様化していると思われる嗜好や個性がむしろ無化されていることへの風刺が読み取れます。

キム・ドンホは、コミックの手法で描く作品が特徴。架空の光景やキャラクターを通して劣等感が「理想的な自由」へと転化されることを提示。

ソル・ドンジュは「City Trekker」として旅先で都市の風景をスケッチ、行き交う人々をポップ・アイコンとして描き、都市と人間の実存について考えを巡らせています。

作家活動と並行しステッカーショップの運営もするイ・ドンフンはステッカーや土産品をモチーフに、日常に埋もれていくさまざまな感情や記憶について表現しています。

無名で無数の個人の物語

5人に共通するのは、個人の生の痕跡。政治経済、文化、歴史の連続体である都市は時にそこに生きる個人の感情や記憶を無残にも飲み込み、生きながらえていきます。都市の景色はクリーンですが、人間の感情のもつれが澱となって沈み、劣等感は行き場なく漂う。

「今この瞬間に向き合っている複雑な感情、それぞれの内面に抱える『COMPLEX』。その現実は悲しみであり笑いであり、時にとても些細なものかもしれません。自らの『COMPLEX』を隠すのではなく、さらけ出すことでお互いを癒せるという信念が私たちを結びつけます。そして、それぞれの言葉と手法で『自分だけの物語』が『特別な力』をもつことを解き明かします」

C.P.Sのリーダー的存在であるジュ・ジェボムは、韓国の若い世代がK-POPや現代アートシーンで世界的な発信力をもつようになった自国に誇りを感じる一方で、猛烈な競争社会のなか「寂しさを抱えている」といいます。韓国のみならず世界の肌にまとわりついて離れない空虚さ。それには自身の暗部を見つめ寄り添うことが救いになるのではないかと考え、感情と記憶が合一した「COMPLEX」を生きる証としてひとつひとつ拾い上げます。

ディストピアを生き抜く倫理

美学、芸術論を専門とする埼玉大学の加藤有希子は著書『点描の美術史』(※)で、水玉模様やデジタルドットといった「多焦点」の視覚表象が一般的となった背景に「私たちの『生き方』『死に方』がより動的で暴力的になった」ことがあると仮説を立てています。そして、多焦点は人間が困難に向き合うための「『美』であり、『倫理』であり、『道徳』である」と捉えています。

感染病やテロ、自然災害によって命が一瞬で断ち切られ、生死に対する信頼が崩れた近現代。コロナ以降でそれは極まり、今も戦争は止むことなく政治経済でも火種がくすぶり続ける。いつ、どこで命が断絶するかわからない「暴力的な時代」にあって多焦点とは歴史の中で語られもしない無名で無数の記憶、生の痕跡として捉えることができます。

ジュ・ジェボムのピクセル表現はまさにそのように位置付けることができ、他4名の描く日常の情景のスケッチ、架空のキャラクター、ビンゴカード等々は感情、記憶を留める装置として置かれます。

昨年は戒厳令によって断絶の淵も見た韓国。5人の作家たちの作品にはポップでありながらひしとした静けさがあります。それは同時代に生きる者たちへの鎮魂であり、未来がディストピアであろうとも楽しんで生き抜こうとする意思からくるもの。暴力的な時代、空虚な世界に可笑しみをもたらす倫理、そして美。人に寄り添い、時代を乗り越えるCOMPLEXです。

※加藤有希子『点描の美術史 印象派から現代アートまで』(水声社/2024年)

【キュレーター】

other

2021年より福岡を拠点に、ジャンルを横断した展覧会企画やアートコーディネートを展開。特に韓国アーティストとの積極的な交流を通じ、アジアの玄関口である福岡から、アートが果たす社会的・文化的役割を問い直し、広く発信しています。また灰野敬二、岸田繁、石橋英子などを迎えたライブイベントの企画・開催も継続的に行っており、イベンターとしての活動も展開しています。

@other_jp

About sales of artworks

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

275C
275C
Ichiro.C
「嗜好の肖像」という制作観をもとにユーモアとウィット、言葉遊びを織り交ぜたテーマを秩序とバランス、そして変奏(ヴァリエーション)で表現する。ポップアートを基盤にしたビビッドでキッズライクな感性が特徴的。ペインティング、立体、グラフィック、映像など多様なメディアで活動しており展覧会だけでなく企業やブランドとのコラボレーションも幅広く展開中。
キム・ドンホ
キム・ドンホ
Kim Dong-ho
ペンと筆を使い、旅や日常の中で出会った風景に空想のキャラクターや物語を加えて絵を描く。現実に非現実的な要素を織り交ぜ、時には世界を風刺し、時には人間の痛みや温かさを表現する。
イ・ドンフン
イ・ドンフン
Lee Dong Hoon
都市と日常、個人の趣向をテーマに「お土産(Souvenir)」をモチーフに制作。特に好んで使用する「ステッカー」の形式を借りて、明快で楽しいアートワークを生み出している。グラフィックデザインスタジオのディレクターであり、アーティストとしても活動。さらに、ブランドとのコラボも行う、ソウル拠点のアートスーベニア・プラットフォーム「Seoul Sticker Shop」を運営。
ジュ・ジェボム
ジュ・ジェボム
Joo Jaebum
ピクセルという小さな単位を通じて、多様な形と感情を表現する。
ソル・ドンジュ
ソル・ドンジュ
Seol Dongju
都市を歩き、観察し、日常に溶け込んだ風景をペン画と写真で記録。目立たない風景の中の違和感やユーモアに興味を持つ。ふと目にとまるもの、気になる光景を手がかりに、都市の物語を描き出す。