ARTIST INTERVIEW

フォトグラファーから現代アート作家へ・TAKAPRINCIPAL(タカプリンシパル)の独占インタビュー。

「不安定な世界にこそ、クリエイションが生まれる」

TAKAPRINCIPAL 個展「Unstable Perfection」
<2024年11月09日(土)〜11月24日(日)>

30年間フォトグラファーとして一線で活躍し、今年、現代アート作家としてデビューしたTAKAPRINCIPAL(タカプリンシパル)。アナログ表現の本質を追求する彼にアーティストへの転身の経緯と創作について話を聞いた。

ーー高校卒業して間もなくフォトグラファーとして活動。仕事も順調ななかニューヨークへ。

「9歳の時に写真を始めて、ずっと求めていたのは(リチャード・)アヴェドン、(セバスチャン・)サルガドといった深いところから来る視線とかパワーで、日本のコマーシャルフォトの現場でそういったことを感じることは正直ほとんどなかった。仕事は面白かったけど、自分が求めているのは単に日本人にはない異国の感覚なのか表現密度、深さなのかを知りたくて、とりあえず動いておこうと思ったんです」

ーーニューヨークで影響を受けたことは?

「ニューヨークではフォトグラファーというよりプリンターとして活動している時間が長かったんだけど、ダークルーム(現像所)でマグナムのフォトグラファーやマイルス(・デイヴィス)のポートレートも手がけていたプリンティング・ディレクターなんかに出会って『これは一生追いつけないな』って思う写真をしょっちゅう目にするし、彼らからは『コマーシャルフォトで有名になるなんてことは大したことじゃない。人生をかけた本当のものが映るのは50歳になってからだぞ』と言われたのは衝撃でしたね」

ーー50歳でアーティストになるというアイディアはそこから?

「その後に住んだ場所が、どこもアートを意識させられる街だったことは関係あると思うけど、そうやって教えられたことから50歳ぐらいまでにいろんな経験を積めば、何かしらできるんじゃないかとは考えました。その頃、自然が好きだったから大自然では暮らしていけるのかな?と思ってアラスカに3ヵ月ぐらい行ってみたんです。でも、狩りとか牛さばくのは相当キツイし水汲みぐらいしかできなかった。自分は都会でしか生きていけないんだなってわかったことは、今やっている自然と都市のエナジーというテーマにつながっています」

「感覚としては90年代に雑誌の編集部で『こんなことやれたら楽しいね』って言って面白いことやってたのと同じ。自分のライフスタイルもアンテナが引っかかる場所を探して、そこにいる面白そうな人と組んで面白いことを見つけて、それが終わったら、また別の場所っていう遊牧民的な考えで動いてきたし写真からアートっていう流れも同じ感覚だから自分のなかでは変わらないんです」

ーー最近、取り組み始めたペインティングと写真の違いは?

「写真は自由なものだと信じてきて、いろんな場所に旅に出て『いいのが撮れた』と思ってもプリントや画像処理をしていくと『全然自由じゃないじゃん!』って15年くらい前から感じ始めてました。大自然に身を置いて、でっかいフィーリングを味わっているのにこれだけしか撮れてないの?って。自然の風景を撮影する時、当然支配はできないわけだから。写真は表現手法として制限があって不自由さがあるから人に共感されやすいんじゃないかな」

「絵を描き始めて『これは、写真で表現できることなのか?』と検証しているけれど、やっぱり写真では出来ないことが絵にはある。写真を長くやってきて突き詰めてきたつもりだけど、ストローク(絵筆で描く)に自由があったのか!と気付かされた。アートを観てもすぐに共感できないのは自由だから。やる方も観る方にも自由がある」

ーー自由な表現を見つけた。アート作品を制作する上で意識していることは?

「ミクスト・メディアの作品では、都会の人間が大自然に生きたいっていう欲望がどんなものかっていう自分のプリミティブな概念をグラフィカルに表現しています。ネオンカラーの色と形で表現しているのはエナジーで、ペインティングではより自分の内側にあるものを吐き出しているから、長く考えたものじゃダメだなというのはあります。作品と呼べるのは、5分以内ぐらいに出来たものですね」

「写真を樹脂で固めているのは、自分のプリミティブな概念と今のテクノロジーを保存する意味合いがあって、現代のプリンターやインクは年単位で進歩しているし、プロセッサーは90年代にMac数十台分使わないと出来なかったことが、いちばん下位のモデルでできるようになってる。この時代の凄まじいスピードで起こっている進化と、それで出来ることを未来に保存することはアートの重要な役割だと思っています」

ーーアーティスト一年目で東京、名古屋、香港、タイなどグループ展と個展開催もハイペースです。完成スピードもクリエイションの重要なポイントなのですね。

「写真やクリエイティブディレクションをずっとやってきてアイデアが出し切れないくらいある。絵を描き出すと止めることができなくて、ずっとやっている。自分のプリミティブな概念とストロークが一致し始めるようになって、一日数十枚はザラで毎日作品が大量に生まれ続けている」

「写真でいうとスマートフォンが出てきてから画質とか画素数はあんまり関係ないようなものが存在しているわけで、フォトショップで肌修正に3日かけることより、グラフィカルに一瞬で完成するものが現代の表現じゃないかと捉えてます」

ーー本展「Unstable Perfection」の意図は

「大自然が好きって言いながらアラスカで水汲みしかできない人間が自然を語っちゃダメだろって思っている自分がいて、でも都会にいるだけではストレスフルだから自然の中に入って行って都合よく、いい部分だけを写真に収めている。これって矛盾していて不安定な状態。矛盾を抱えてる感覚が作品となっている。不安定だからこそクリエイションに結びつくと思っています」

「安定していたら何も考えなくていいけれど、ずっと安定していたら変えたくなるのも人間の欲望なのかなって。不安定さはずっと続いていくし、その状況で生み出したものはパーフェクトなんです」

アートはパッションを生み出すものとし「個人の内側の深いところにしかアートはない」というTAKAPRINCIPAL。目まぐるしく変化する世界に、瞬間に生み出されるエナジーを捉えるのは、まさにフォトグラファーの感性。個展「Unstable Perfection」は、11月9日(土)〜11月24日(日)の期間に開催。

ABOUT ARTIST

TAKAPRINCIPAL
TAKAPRINCIPAL
1974年愛知県出身。1993年渡米。2001年帰国後、TAKA名義でフォトグラファーとして雑誌、広告の撮影を担当。 コマーシャルフォトと並行して写真家として東京、ニューヨーク、ロンドン、香港など国内外で作品を発表。2013年拠点を香港に移す。2024年、TAKAPRINCIPALとして現代アートの作家活動を開始。

ABOUT EXHIBITION

展覧会

TAKAPRINCIPAL 個展「Unstable Perfection」【福岡】

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31  KD南青山ビル4F

会期

2024年11月9日(土)〜11月24日(日)

開館時間

平日:13:00〜19:00
初日・土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

レセプション日程

11月9日(土)16時〜19時【予約不要】

在廊日

11月9日(土),10日(日),16日(土),17日(日),23日(土),24日(日)

入館料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。