都市と自然、そして人間の周波数を表現
1990年代初頭からフォトグラファーとして雑誌や広告で活躍し、2024年に現代アート作家として本格的に活動を始めたTAKAPRINCIPAL。
都市と自然、そして人間の周波数の可視化を試みる「W Frequency」、太陽をモチーフに原始覚醒を表現した「Primitive Awake」等世界を旅して撮影された自然景観の写真に蛍光色が印象的なグラフィックエフェクトをかけ、レジンや銅箔で加工した半立体作品を発表しています。
本展「Unstable Perfection」では、阿蘇山をモチーフにした組み作品《W Frequency SP》をはじめ写真表現をベースにしたミクストメディア作品8点、そして自由な表現の感覚が得られているというアクリルペインティング17点を公開。
TAKAPRINCIPALは、1974年愛知県出身。「五感を使って生きたい」と9歳から写真を撮り始め、高校卒業と同時にフォトグラファーとして活動を開始。1993年に渡米し、ニューヨークで国際的な写真家集団のマグナム・フォトをはじめ世界的なフォトグラファー達のプリンターを務めました。2001年日本に帰国以後、雑誌や広告のコマーシャルフォト、クリエイティブディレションを手がけてきました。
フォトグラファーとして活動してきた30年間で写真のデジタル化があり、SNSにAIの普及と環境が激変するなかで確信したふたつの表現方法。写真を素材として現代アートに昇華させるミクストメディア的アプローチと色とテクスチャーだけでエネルギーや周波数(Frequency)を表現する抽象画です。
いずれもコピー・アンド・ペースト時代にあってフィジカルなアナログ表現の本質を追求。テーマとするのは、エナジーの可視化です。現代のエナジーを取り入れた作品は、未来に発掘される埋蔵品に見立てられ、レジンや金属の箔で作品を加工することには2000年代初頭の技術、そして人間のプリミティブな感性を保存する意味が込められています。
自由の在り処としてのペインティング
本展での見所は、30年にわたるフォトグラファーのキャリアで蓄積されてきたアイディアを表現するペインティング。アクリル絵具は濃密に塗り重ねられ、鮮やかな発色と軽やかな筆致が画面に展開されます。
体幹の強さを感じさせるマチエールが特徴的で、非形象を描きながら規律性ある美しさの表れはフォトグラファーならでは。展覧会のタイトル「Unstable Perfection(不安定な完全)」の実像といえるでしょう。
「自由を求めて写真を撮ってきて『撮れた!』と思っても、現像や画像処理していくと全然自由なものでないと気づくようになった。絵を描き始めると、ストロークには自分の中にあるものが自然と溢れ精神が解放される感覚があって、ここに自由があったか! と感じた」
文明と文化の波長が重なり、アートとなる
「アートとは人間の感覚が自然化した姿だと思っていて、傲慢の極みともいえるような権威としての芸術ではなく、五感で感じていることをアート作品に落とし込み、また五感に戻すことを意識している。アートは個人の深いところにしかない、と改めて感じている」
ニューヨーク、ロンドン、そして現在は香港とこれまでに住んできた街がアートについて考えさせられ、エネルギーが充満した場所であったこと。いっぽうで自然が好きで、一時期大自然での生活への憧れからアラスカに移住を試みたものの過酷さに無力さを感じたこと。こうした生活での皮膚感覚が都市と自然、そして人の周波数というテーマへとつながっています。
現在はペインティングにのめりこみ、合間にカメラを持って大自然に入り写真撮影をする。都市と自然、写真と絵画がうまく循環し創作意欲が止まらないと話します。テクノロジーによるのでもなく、自然に委ねるでもない。技術的所産である「文明」、精神的所産たる「文化」の波長にフォーカスするTAKAPRINCIPAL。アートの像が鮮明になっています。