菅雄嗣 × 増田将大「時のかたち」【東京】

2025年3月15日(土)〜3月31日(月)

YUGEN Gallery(東京都港区南青山3-1-31 KD南青山ビル4F)では2025年3月15日(土)より、菅雄嗣 × 増田将大による二人展「時のかたち」を開催致します。

展覧会情報

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31  KD南青山ビル4F

会期

2025年3月15日(土)〜3月31日(月)

開館時間

平日:13:00〜19:00
土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

在廊日

未定

入場料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

展示作品ハイライト

ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 6『メニスル』」
(トーキョーアーツアンドスペース本郷、2024)
撮影:加藤 健 画像提供:Tokyo Arts and Space
ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 6『メニスル』」 (トーキョーアーツアンドスペース本郷、2024) 撮影:加藤 健 画像提供:Tokyo Arts and Space
ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 6『メニスル』」
(トーキョーアーツアンドスペース本郷、2024)
撮影:加藤 健 画像提供:Tokyo Arts and Space
ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 6『メニスル』」 (トーキョーアーツアンドスペース本郷、2024) 撮影:加藤 健 画像提供:Tokyo Arts and Space
増田将大《Moment's#66》
増田将大《Moment's#66》
増田将大《Moment's#109》
増田将大《Moment's#109》

※こちらは過去作品となります。展示作品は異なる場合がございますので、ご了承ください。

ステートメント

注目の作家同士。コラボレーションした空間を初公開。

東京藝術大学時代の同級生であり、関東最大級のアートスタジオ〈スタジオ航大〉(茨城県取手市)で共に制作活動を行う菅雄嗣と増田将大。本展は、長年親交を深めてきた二人にとって初めての二人展となります。空間と時間をそれぞれの視点から探求し続けてきた彼らが、「時のかたち」というテーマのもとに表現を共鳴させ、新たな展示空間を創り出します。

CGなどで作り出された、どこか既視感のある空間イメージをモチーフとする菅雄嗣。二分割したキャンバス上で絵の具を塗る・削るという相反する行為を両立させる独自の手法を用いています。異なる技法とテクスチャーによって生み出されるひとつのイメージは、現実と架空の境界を横断する様を示唆しています。

増田将大は実在する風景を撮影し、その画像を同じ場所に投影し、また撮影するという行為を複数回繰り返し、さらにその画像をキャンバスにシルクスクリーンで刷り重ねるといった作品を発表。多数の瞬間の重なりを、絵の具の層と掠れを孕んだイメージによって描き出しています。

「現実と虚構の境界」「空間」「時間」をキーワードに、両者の類似と差異を明らかにする本展。現在のアートシーンで動向が注目されるふたりの初の試みとなる空間演出は最大の見所となります。ぜひ、ご期待ください。

文化研究者・山本浩貴氏による本展寄稿テキスト

本展「時のかたち」は、菅雄嗣と増田将大の二人展である。

菅は、絵画を通じて、その手法はさまざまに異なるが、一貫して「境界」を探求してきた作家である。たとえば、菅はキャンバスの全体に鏡のような加工をほどこし、そこに絵の具をのせていく。ついで、そのキャンバスを直線で二分割し、のせた絵具の一部を削りとることで、あたかも写真のネガとポジのような表現をつくりだす。近年、菅は現実と虚構の境界としての「リミナル・スペース」に関心をいだく。その現実性と虚構性の両方をはく奪された空間は、どこか主体性を喪失した中間領域であり、菅が描くリミナル・スペースは、ときの流れから切り離された不可思議な印象をあたえる。

増田もまた、「境界」、それもとりわけ菅と同じく、現実と虚構の境界に関心をもちながら作品を制作してきた作家だ。増田は風景などの対象を撮影し、その像をプロジェクターで繰り返し同じ場所に投影する。それをシルクスクリーンで刷る工程の反復をつうじて、絵具が幾重にも重なる多層構造の絵画がうまれる。増田が絵画のなかに生成する空間も、菅が関心をもってアプローチしてきたリミナル・スペースに近似している。ゆえに、菅と増田の両者とも、空間への関心をもつことは明白だ。しかし、増田が表現する空間が重厚な物質感で満ちているのに対し、菅が描く空間は空虚な喪失感をたたえている。この顕著な違いは、どこからくるのだろうか。

それは、「空間」にかんして類似の関心をもつ両者の絵画が、「時間」にかんしては大きく異なるスタンスをとっていることに由来するとわたしは考える。すなわち、菅が絵具を削ることで作品から時間をはく奪していくのに比べ、増田は絵具を重ねることで作品に時間を堆積させているのだ。

そのようなわけで、菅雄嗣と増田将大の絵画作品における空間的な類似に自然と目が向けられるが、同時に両者の時間的な差異にも注目してもらいたい。本展では、類似と差異をつうじて、菅と増田の芸術実践のさらなる意義が対位法的にうかびあがる。ふたりがコラボレーション的な手法で新たに制作したCGを用いた映像作品も、そうした類似と差異を際立たせる仕かけとなっている。

著者情報

山本浩貴(やまもと・ひろき)

文化研究者。1986年千葉県生まれ。実践女子大学文学部美学美術史学科准教授。一橋大学社会学部卒業後、ロンドン芸術大学にて修士号・博士号取得。2013~2018年、ロンドン芸術大学トランスナショナルアート研究センター博士研究員。韓国・光州のアジアカルチャーセンター研究員、香港理工大学ポストドクトラルフェロー、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教、金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科芸術学専攻講師を経て、2024年より現職。著書に『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社 、2019)、『トランスナショナルなアジアにおけるメディアと文化 発散と収束』(共著、ラトガース大学出版、2020)、『レイシズムを考える』(共著、共和国、2021)、『この国(近代日本)の芸術――〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』(小田原のどかとの共編著、月曜社、2023) など。現在、①2000年代以降の日本における地域芸術祭、②エスニック・マイノリティの芸術、③現代アートにおけるジェンダーとエコロジーの問題などの調査・研究を行っている。

作品販売について

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

菅雄嗣
菅雄嗣
Yushi Suga
すが・ゆうし/1988年長崎県生まれ。ドイツ・シュトゥットガルト美術大学へ留学した後、2017年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了。展示は「Scraped painting」(福岡・WHITESPACE ONE 2017年)、「Spring fever」(東京・駒込倉庫 2017年)など。受賞歴は「第4回CAF賞」齋藤精一賞(2017年)ほか。コレクションは「​JAPIGOZZIコレクション」「佐々真コレクション」に作品収蔵。MAHO KUBOTA GALLERY所属。
増田将大
増田将大
Masahiro Masuda
ますだ・まさひろ/1991年静岡県生まれ。2020年東京藝術大学博士後期課程修了。受賞歴は「TERADA ART AWARD」入選(2015年)、「東京藝術大学上野芸友賞」(2017年)他。雑誌「美術手帖」(2016年12月号)において「ニューカマーアーティスト100」選出。コレクションは「公益財団法人現代芸術振興財団前澤友作コレクション」、「リッチモンドホテルプレミア東京スコーレ」に作品収蔵。