GEORGE HAYASHI 個展「COSMIC DUAL FORCES」

2022年8月26日(金)〜8月31日(水)

YUGEN Galleryにて2022年8月26日(金)〜8月31日(水)の期間、GEORGE HAYASHIの個展「COSMIC DUAL FORCES」を開催します。

展覧会情報

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31  KD南青山ビル4F

会期

2022年8月26日(金)〜8月31日(水)

開館時間

平日:13:00〜19:00
土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

在廊日

8月26日(金)終日
8月27日(土)終日
8月28日(日)午後
8月31日(水)終日

入場料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

展示作品ハイライト

※展示作品は一部変更となる場合がございます。ご了承下さい。

ステートメント

自然や野生動物への敬愛

ジョージ ハヤシは在上海⽇本国総領事館や在台湾日本領事公邸などに作品が収蔵され、アートフェア上海に日本代表作家として参加経験もあるアーティスト。マカオのカジノホテルや上海のワールドクラスバー「Speak Low」、スボーツブランド「ナイキ」の施設の壁画制作を手がけるなどアジア圏で特に高く支持されています。 

 1978年東京都出身。祖母に水墨画家の林素菊をもち、ファッションデザイナーであり日本画も描く母親など親戚縁者に芸術に携わる者が多くいる環境に育ちます。 

 「身の回りに画材が揃っていて美術館等にも沢山連れて行ってもらいましたが、どこか堅苦しく、特に祖母には厳しさを感じ自由や楽しさがなかった」と話し、隠れて絵を描いていたと話します。画家業にも良い印象を持っていなかったといい、絵ではなく音楽の道に進もうと考えていました。 

 この芸術家系との間の取り方、距離感がハヤシの芸術感覚を育みます。幼少期にアメリカのカートゥーンや映画に始まり、伊藤若冲や葛飾北斎、横尾忠則、岡本太郎といった克明な色遣いに強く影響を受けます。くしくも「西洋絵画ではなく」日本人画家に心酔したことは血のなせる業とも言え、興味深い点です。

 

 「伊藤若冲を観たのはストリートカルチャーに影響を受けグラフィティも描いていた20歳頃、版画ベースの奥行きがない平面的な世界観は見た目も面白く、これをやりたいと思った。他にも横尾忠則さん然り、単純とも思える平面表現の中に強烈な情報が入っていることに凄味を感じていた」 

 西洋絵画とは相容れない立体感や陰影がない画面。八万個余りの升目、その中にさらに別の区画を設けたモザイク模様で動植物のパラダイスを描き上げた若冲の『鳥獣花木図屏風』に代表される、絵画というよりも精緻なデザイン的画面構成がハヤシに楔を打ち込みます。

誰からも何からも搾取されない自由

ハヤシは自然が持つエネルギー、野生動物の本能や生き方に惹かれ「NOMAD HEART/自由な心」を信条とし、作品を制作しています。ライオンをモチーフとして頻繁に描くのは、縄張りをもたず、生きやすい場所へと移住しながら仲間を増やしていく生き方に共感してのこと。それは、おのおのが狭い範囲での同一性に囚われることなく、集権的な中央から逃れる遊牧民(ノマド)のシンボルとして置かれています。 

 本展『COSMIC DUAL FORCES』は、風水における「太陰太極」がテーマ。内に蓄える静的なエネルギー「陰」と外に放出される動的なエネルギー「陽」は表裏一体であり、天地万物は、この陰と陽のバランスによって成り立つとの説から、他者との関わりと世界のあり方を問いかけます。描き下ろし新作の他、テーマとは別にハヤシが愛する名画へのオマージュ作品(今回は「最後の晩餐」をポップなアプローチで制作)も展示。約15点を公開します。 

 「動物や自然のエネルギーの裏側にあるものを描きたい。静かに見えるものにも激しいものがあり、激しく見えても裏側には平穏さもある。世の中すべてが一方的な見方では捉えられない」として、目の当たりにする事象の裏側への想像を働かせます。

 二頭のライオンが対極的な力で向き合う作品「COSMIC DUAL FORCES01」。一見すれば敵対しているように見えますが、ハヤシはイデオロギーなど求心的な争いから離れ、互いの自由を尊重しながら依存し補完しながら生きていく様を描いています。そこには、各自の自由を否定する動きに対しては頑として立ち向かう意思、自由に生きることには攻撃性が含まれるノマドの世界観が立ち上がります。そして他者と共存する上での距離感、日本における「間」、余白を確認します。 

 生き物がもつ生命力に畏敬の念を抱いていた若冲のように、ジョージ ハヤシもまた動物や自然への敬愛が作画の原動力となっています。動物や自然は人間による意味づけとは関係なく、ただそこに存在します。人間社会においても各自は根本的には無関係に存在します。同時に偶然にも多様な関係性で結びつき、それはいつでも切断される。自然や動物に生のリアリティを感じるのは、これを剥き出しに見せてくれるからなのです。

陰と陽の二重のドラマを生きるリアル

インターネットが登場し、SNSへと進化する中で理想的なコミュニケーション社会が到来すると考えられていました。しかし、開放的かつ横断的な関係で繋がれると思いきや、監視し合うような閉鎖的な空間が生まれ、分断が進んでいることは否めません。ジル・ドゥルーズは「創造するということは、これまでも常にコミュニケーションとは異なる活動」とし、非-コミュニケーションの必要性を唱えました。コミュニケーションが切断される機会、空間をもつことでクリエイティブが実現されるというわけです。 

 美術においてはかつて距離を置いていた祖母に「やっておかないと後悔する」と思い、20代半ばで弟子入りし、水墨画を学んだハヤシ。余白と省略の美学を知り、「具象と抽象を織り交ぜる作風が出来上がった」と話します。そして、色の交じり合い、具象と抽象の重なり合いは人間の手が入りすぎるのはもちろん、入らなさすぎても荒れる自然や動物と現代社会の関係性の余白として描かれるのです。 

 ジョージ ハヤシは間のなくなっている閉塞した状況、“間抜け”な社会に静と動、陰と陽の二重(dual)のドラマを生きるリアリティを立ち上がらせ、余白を生み出すことで誰もがそれぞれの能力を発揮できる、自由で理知的な社会を作ることを目指すのです。

参考文献

動きすぎてはいけないージル・ドゥルーズと生成変化の哲学(千葉雅也著/河出文庫)記号と事件  1972-1990年の対話(ジル・ドゥルーズ著 宮林寛訳/河出文庫)

作品販売について

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

ジョージハヤシ
ジョージハヤシ
George Hayashi
1978年東京都出身。 10代の頃からアパレルブランドのデザインを手がけ、飲料水ブランド「チェリオ」など企業コラボレーション多数。2010年から活動拠点を上海に置き、中国国内外の画廊や美術館で展覧会を開催。 日本総領事館の中国政府向け年賀の絵画や日本国内でのSG CLUB、ゑすじ郎(以上、東京)、El Lequio(沖縄)等の店舗の壁画を手がけるなど様々な活動を展開している。