戦後80年特別企画「ひろしま みどりとりどり」【東京】

2025年8月1日(金)〜8月17日(日)

YUGEN Galleryでは2025年8月1日(金)〜8月17日(日)の期間、戦後80年特別企画として、グループ展「ひろしま みどりとりどり」を開催します。

被爆都市である広島に育つ植物から戦後を考えます。

Exhibition Information

Venue

YUGEN Gallery
KD Minami Aoyama Building 4F, 3-1-31 Minamiaoyama, Minato-ku, Tokyo

Dates

2025年8月1日(金)〜8月17日(日)

Opening Hours

Weekdays: 13:00-19:00
Weekends and holidays: 13:00-20:00
*Ends at 17:00 on the final day only

Closed Days

None

Date of presence

キュレーター在廊:8月1日(金)、2日(土)、3日(日)
作家在廊:現在未定です。確定次第、本ページやSNSにてご案内いたします。

Admission Fee

free

Notes

※在廊日やイベントについて、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

Exhibited works images

徳本萌子《渡り鳥の地図》(2024) Photo: Hitoshi Ozutsumi
徳本萌子《渡り鳥の地図》(2024) Photo: Hitoshi Ozutsumi
渡辺真悠 《ハナカタバミ谷温泉》(2025)
渡辺真悠 《ハナカタバミ谷温泉》(2025)
高松明日香 《植物 The Genus of Plants》(2024)
高松明日香 《植物 The Genus of Plants》(2024)
有田大貴 《Smoke to Cloud / 煙から雲へ》(2024)
有田大貴 《Smoke to Cloud / 煙から雲へ》(2024)

8月2日、3日 ギャラリートーク

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8月11日 オンライン・トークイベント

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Statement

広島を拠点に、作品と場所や空間の関係に特に焦点を当てた企画を展開するタメンタイの山本功がキュレーションを手掛ける本企画は、2024年夏の「タイムとマシンの平和利用」に続くものです。

キュレーターステートメント

80年前、原爆投下によって焼け野原となり、「75年は草木も生えない」と打ちひしがれた広島の街は、いまやさまざまな緑に覆われていました。しかし近年、広島市中心部では倒木が相次いでいます。平和と復興への願いを込めて国内外から寄せられた苗木は大きく育ちましたが、その一部は人間が期待した役割を終え、管理の限界を超えつつあります。

こうした問題意識から断続的に展開してきた企画をベースにこのたび開催するのが、戦後80年特別企画「ひろしま みどりとりどり」展です。東京・表参道のYUGEN Galleryを舞台に、徳本萌子、渡辺真悠、高松明日香、有田大貴の4名が、それぞれ新作を交えて発表します。いまの広島の多様な植生の背景をたどることで、日本の近代化と戦争、そして戦後の復興と現在が地続きのものとして見えてくるはずです。

戦後間もない広島に整然と植えられた幼木の姿や、かつて瀬戸内の島々を白く彩った除虫菊畑を描くのは、映画のワンシーンなどのなにげないひとコマをインスピレーションとしてきた高松明日香です。どちらも、植物の成長とともに発展した都市の経済活動と化学によって既に失われた風景です。しかし画面を眺めてみれば、その地の風景は「色」が集まっておりなすこと、そしてそこにはいまも変わらない「色」があることがわかるはずです。

渡辺真悠は草木の写真を想像上の島に切り貼りした作品を発表してきました。本展では、広島で撮影したさまざまな植物の写真による小さな生態系を、瀬戸内らしいけれどどこにもない「島」にコラージュした平面作品群に加えて、新作となる映像インスタレーションも発表します。これは昨年広島市中区鶴見町の平和大通りで倒木したアメリカサイカチとそのヒコバエの写真を素材にしたもので、手書きアニメーションを投影することで「木陰」をつくります。

「移動する植物とミシン」をテーマに各地で葉っぱを素材とした作品を制作する徳本萌子は、広島で市民の協力を得て収集した葉っぱを縫い合わせた作品「渡り鳥の地図」を展示します。行政の緑化政策の歴史を反映してか、通りや河岸にはさまざまな樹種が立ち並ぶのが広島の特徴です。縫い合わされた葉のまだら模様は、木の性質や環境の多様性を映します。そしてそのことは、木々が人間のためだけでなく、鳥が羽を休め、当て所なき旅の目印となる休息所でもあることを教えてくれます。

原爆の影響は広島市中心部以外にも及びました。原爆投下直後、広島市の周縁部に降った「黒い雨」はその例です。降雨地域とその影響をめぐる科学的な因果関係の立証と政治判断をめぐっては、いまなお裁判が続いています。そんな黒い雨を主題とした新作を発表する有田大貴は、象徴的な物質を画材にした抽象作品を制作してきた作家です。本展では、この雨が降ったとされる地域でキャンバスを広げ、その地の枝葉と、現在の広島市内の有機物からつくった炭化素材を画材にした雲を描きます。

1945年8月から80年の時が流れました。この間、日本を含む世界の一部は安定的秩序のもとに置かれた一方で、そのしわ寄せや矛盾が別の地の対立や紛争を招いていることには心を痛めざるをえません。自然環境への負荷が地球規模に広がっている現状にももどかしさをおぼえます。

そんななか、ここ数十年にわたって記憶の継承のあり方は議論され続けてきました。しかし、未曾有の出来事について、直接経験のない者が継承すべき記憶とはなんなのか、という問いは遠回しに避けられてきたようにも感じます。

そこで一歩立ち止まって、1945年8月6日からは80年もの月日が流れたことを素直に認めることから始めるべきではないか、という思いから本展を企画しました。さまざまな「みどり」にあふれたギャラリー空間で時間を過ごしながら枝葉末節をたどることで、戦後の幹と根を考える機会となれば嬉しいです。

本展覧会メインビジュアルについて

コンセプト

このビジュアルは、「平和大通り」の風景をモチーフに制作されたものです。夏の青空の下、両側に緑の木々が並ぶ通り。その中央に描かれた黄色い道は、歩く人の目線に沿ってまっすぐ遠くまで伸びており、見る人がその道の中に自然と引き込まれるような構図になっています。

この「永遠に続く道」には、戦後の広島が大切にしてきた緑豊かな風景が、これからも変わらず続いていってほしいという願いが込められています。一方で、木々には寿命があるという現実もあります。つまり、このビジュアルは、「平和や自然がいつまでも続いてほしい」という希望と、それを支える私たちの行動の大切さを問いかけています。

制作の過程では、通りを上から見下ろすような構図も検討されたそうですが、それでは「歩く人」の視点ではなくなってしまうと考えられ、最終的には地上に立ったときの目線でデザインされています。

色彩

色使いは、公園や公共施設などに見られるような、親しみのある「ふつう」の色合いをあえて選ばれています。少し素朴で、どこか懐かしさを感じるような色調──たとえば絵の具セットのような色──によって、特別な派手さよりも「平凡な日常という圧倒的な力」を大切にしたいというデザイナーの想いが表現されています。

About sales of artworks

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

Moeko Tokumoto
Moeko Tokumoto
Moeko Tokumoto
Born in Kanagawa Prefecture in 1993. Graduated from Musashino Art University, Faculty of Art and Design, Department of Industrial, Craft and Design, majoring in textiles. Based on the theme of "mobile plants and sewing machines," she creates works in various locations that preserve relationships with time and people by sewing plant leaves that would normally return to the soil with a sewing machine.
Mayu Watanabe
Mayu Watanabe
Mayu Watanabe
Born in 1991. Graduated from the Department of Film and Media Studies, Faculty of Art and Design, Musashino Art University. He has exhibited works in various locations, mainly a collage series in which he reduces the size of photographed plants and trees and pastes them onto an imaginary island, as well as works using video and clay as materials.
Takamatsu Asuka
Takamatsu Asuka
Asuka Takamatsu
Born in Kagawa in 1984. Graduated from the Design Course of the Department of Fine Arts, Faculty of Arts and Culture, Onomichi City University, and completed the graduate school at the same university. He creates paintings that capture scenes from stage plays and movies, as well as everyday landscapes.
Arita Daiki
Arita Daiki
Arita Taiki
Born in Hiroshima Prefecture in 1987. Graduated from the Department of Graphic Design at the College of Art at Jacksonville University in Alabama, USA. Using materials that symbolize the subject of the work as art materials, he mainly produces works that abstract the memories and relationships that materials possess.