YUGEN Gallery 4周年企画展「New YUGEN: Between Depth and Play」【東京】

2026年1月31日(土)〜2月15日(日)

YUGENGalleryでは2026年1月31日(土)〜2月15日(日)の期間、ギャラリーオープン4周年を記念する企画展「New YUGEN: Between Depth and Play」を開催します。

木彫、絵画、陶芸など境界に囚われない作品群で構成します。

展覧会情報

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31  KD南青山ビル4F

会期

2026年1月31日(土)〜2月15日(日)

開館時間

平日:13:00〜19:00
土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

レセプション日程

レセプション:1月31日(土)17時〜20時

在廊日

1月31日(土)

入場料

無料

注意事項

※在廊日やレセプションについて、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

ステートメント

幽玄なる美意識を再定義する

YUGEN Gallery は、日本の現代アートを中心に紹介するギャラリーとして2022年2月に東京・渋谷に創立しました。ギャラリー名にある「YUGEN」とは、日本独自の美意識を表す言葉「幽玄」に由来します。4周年を迎えるにあたり、本展では5名の作家たちと現代の感覚に開かれた「新しい幽玄」を探ります。

参加作家は、KAKA、斉木駿介、城田彩花、Moe Ohara、持田象二。木彫、絵画、陶芸など境界に囚われない作品群で構成します。

いまの感覚に開かれた工芸、絵画

KAKAは、平安時代の木像技法「一木(いちぼく)造り」による木彫作品を制作。一本の木から像を彫り出すという神木信仰とも結びついていた技法によって、きのこや鳥をモチーフにしたファンタジーを展開。ポップな印象でありながら、檜や岩絵具によって醸される複雑な深みが特徴です。素材と向き合い、手を動かすなかで生じる揺らぎ、過ごす時間を作品に閉じ込める彫刻に「生きている今この瞬間」の尊さを表現しています。

現実とインターネット空間にあふれる情報を絵画の手法で記録保存することを試みるのは、斉木駿介。昭和のTV画面、セル画アニメを想起させるモチーフを重層的に組み合わせた表現が特徴。画面上では何が起きているのかはわからず、見る者の意識は宙吊りとなります。今回はYouTube、オンライン会議などで背景合成を目的に使用されるグリーンバックを支持体に現代社会で「消されるもの」「残らないもの」をテーマとした作品を発表。

夜明け前の薄暗い部屋でバナナを食べる人物、赤い消化器、オレンジ色のボール。遠近感はなく、影の方向もバラバラ。暗示的なモチーフが倒錯的に登場し、明確な賦彩にかえって不安感が掻き立てられる画面。城田彩花が描くのは、日々の暮らしのなかにある「些細な苦しさ」。ジョルジョ・デ・キリコの形而上絵画を思わせる作風で「人間が本来もつ感情、感覚へ立ち返り、昇華する」ことを試みています。

Moe Oharaは書道の練習用として使われ、その後廃棄される手漉き和紙をアップサイクルし、立体と平面の「あわい」に立つかのような作品を制作しています。着彩に用いるのは藍、柿渋、鉄錆といった自然由来の素材。形は朽ち、土へと還る「循環」に寄り添い、自然との均衡を器物に表しています。素材と深く向き合う造形の過程に「戯れ」の本質があることを見つめ、現代社会の課題を静かに問いかけます。

持田象二は、ゲームカルチャーを背景にした陶芸作品を発表。土をこね、形をつくり、焼成する。その過程で作家の意図を超えた偶然が必ず介在してくる。焼成中に釉薬が剥がれるなど陶芸ではミスとされる「窯変」を出現率が低いモンスターと見立て、フィギュアのように表現するところに遊び心を感じさせます。KAKA、Moe Oharaと同様に素材と向き合い、身体性を伴った、偶然全体を受け入れる制作は生の原初性に溢れています。

深みに触れる知性としての「遊び」

KAKA、Moe Ohara、持田象二は自然物の素材と向き合い、身体的な行為の過程で遭遇する不条理に神秘性を見出しています。斉木駿介と城田彩花は、わかりきったと思える日常の景色に潜む、説明しきれない違和感に揺らぎつつ、その面白味に身を委ねている。

5名は意味や理解から外れて立ち現れる世界に対し、答えを急がず、その場にとどまる。手を動かし、眺め、目の前に起こることを受け入れ、行きつ戻りつする。ものを創ることで日常の中にひそむ神秘や面白さを感じとる。この態度に「遊び」の本質があるといえます。

茶道や華道、俳諧に見られるように形式や戯れは、掴もうとすれば消えてしまう深遠を感覚する知性としてあります。遊びは深さから遠ざかるものではなく、その一端に触れ、思考を開くもの。幽玄なるものへ近づく回路としての遊びを現代的なアプローチで確かめます。

KAKA
KAKA
カカ/木彫家。1995年中国生まれ。2021年、女子美術大学大学院美術研究科美術専攻博士前期課程修了。 平安時代の「一木(いちぼく)造り」という伝統的な立体技法を基盤に、生命の生成と変容を主題として制作を行っている。素材としての木と向き合う中で、完成された形態のみならず、彫る行為に内在する時間性や身体性そのものを表現の核として捉えてきた。 近年展開する「茸鳥」シリーズでは、菌類と鳥という異種の存在を融合させ、進化の過程や種の境界が揺らぐ生命観を造形化している。環境に応答しながら姿を変えるきのこの性質は、作家自身の内的感覚と重ね合わされ、彫刻は単なる象徴を超えて、生命の循環や不可逆的な時間の流れを内包する存在として立ち現れる。素材の質感と形態の均衡を重視し、意味を過度に規定しない造形は、鑑賞者に多層的な解釈の契機を開いている。
斉木駿介
斉木駿介
Shunsuke Saiki
1987年福岡県生まれ。九州産業大学芸術学部卒業。漫画やアニメーションといったサブカルチャーからの影響を起点に、映像やインターネット、スマートフォン以後の視覚環境を背景とした制作を行っている。 シミュレーショニズムやサンプリングの思想に影響を受け、既存のイメージや情報を引用・再構成しながら、リアルとフィクション、日常と仮想が交錯する現代の感覚を可視化してきた。近年は、グリーンバックやキャンバスにグリーンを作品の支持体に用い、その機能を反転させることで、本来は背景を消去する装置が「消されるもの」「残らないもの」を照らし出す構造を探っている。排除され、可視化されないイメージに意味を見出しながら、現代のイメージ環境を問い直している。
城田彩花
城田彩花
Ayaka Shirota
2001年三重県生まれ。東京藝術大学油画科卒業、同大学壁画研究室在学中。幼少期より芸術やデザインに親しむ環境で育ち、感情や記憶、心象風景を主題とした絵画制作を行っている。 制作においては、人と人との関わりの中で生じる感情の揺れや、日常に潜む違和感を手がかりに、自己と他者に共通する内面的な現象を可視化することを試みている。色彩やモチーフは感情や記憶の状態に応じて選び取られ、象徴的な構成によって、鑑賞者自身の記憶や感情を呼び起こす。作品は、内面との静かな対話を促す場として立ち現れる。
Moe Ohara
Moe Ohara
1987年兵庫県生まれ。 廃棄される和紙を素材に用い、再生と循環を主題とした作品を制作している。美術教育を専門的に受けることなく、ものづくりに携わる家族のもとで育った経験から、「人の手によって作られたものに宿る気配」への感受性を培ってきた。 書道の練習書きに用いられ、役目を終えた上質な和紙を原料とし、着色や素材もすべて天然のものに限定することで、作品はやがて土へ還る運命を内包する。そこには、創造と消失を対立させるのではなく、循環の一部として捉え直す静かな思想が通底している。 和紙という日本文化に深く根ざした素材を通して、現代社会における消費や廃棄の問題を照らし返しながら、祈りにも似た造形行為によって、見る者の記憶や感覚にそっと触れる表現を展開している。
持田象二
持田象二
Shoji Mochida
1993年埼玉県生まれ。陶という実用と美術のあわいに位置する素材を用い、用途や完成度といった価値基準を相対化する表現を行っている。大学在学中より、料理人の現場や陶芸商を通じて「使われる器」と「見られる器」の双方に接し、陶芸の歴史と現場性を身体的に学んできた。 「#figure」シリーズでは、窯変や釉剥がれ、ピンホールといった本来は欠点とされる現象を、ゲームにおける出現率が低いモンスターを指す言葉「レアポップ」になぞらえ、偶然性を孕んだ存在として提示する。器に現れれば廃棄される部分をあえてフィギュアとして成立させることで、陶芸における失敗と成功の境界をずらし、鑑賞の視点そのものを問い直している。