Souya Handa Project × YUGEN Gallery 共同企画展「Literature in Dots」【東京】

2025年5月16日(金)〜6月1日(日)

2025年5月16日(金)〜6月1日(日)の期間にてSOUYA HANDA PROJECTSとYUGEN Galleryは、ゲームの文学性に焦点を当てた「Literature in Dots」展を共同企画いたします。会場は東京・南青山のYUGEN Gallery、キュレーションはSOUYA HANDA PROJECTS主催の半田颯哉が行います。

オープニングレセプションは5月16日(金)18時〜20時です。

展覧会情報

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31  KD南青山ビル4F

会期

2025年5月16日(金)〜6月1日(日)

開館時間

平日:13:00〜19:00
土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

レセプション日程

5月16日(金)18時〜20時

在廊日

5月16日(金)植田爽介、海沼ちあき、半田颯哉が在廊予定

入場料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

展示作品ハイライト

Adam Martin《The Gotham Art Whores League》
Adam Martin《The Gotham Art Whores League》
Sosuke Ueta《PCS II》(2019)
Sosuke Ueta《PCS II》(2019)
Chiaki Kainuma《SANCTUARY》
Chiaki Kainuma《SANCTUARY》
Souya Handa《Source of Capital #001 (from After Infinite Dreams Series) 》(2024)
Souya Handa《Source of Capital #001 (from After Infinite Dreams Series) 》(2024)

※過去作品となります。展示作品と異なる場合がございます。

ステートメント

今日、ビデオゲームと呼ばれる芸術形式はますます現代アートの世界で注目を集めています。NTT東日本が運営するメディアアート専門の文化施設ICCは、2018年12月から2019年の3月にかけて、「イン・ア・ゲームスケープ:ヴィデオ・ゲームの風景,リアリティ,物語,自我」展を開催しました。これは批評的な表現を持つビデオゲームと、ビデオゲームの「中」でアーティストによって行われるアート作品が提示される展示でした。また、ソウルの国立現代美術館(MMCA)は2023年にビデオゲームの歴史とその様式を用いた現代アート作品を織り交ぜた「Game Society」展を、森美術館は2025年にゲームエンジンを用いた作品を含む「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」展を開催するなど、その切り口は年々多様となっています。

本展「Literature in Dots(ドットの中の文学)」では、ビデオゲームの持つ「文学性」ともいうべき面に着目します。近年、ビデオゲームのオンライン化が進む中、ビデオゲームを通じたコミュニケーションとして想像されるものは、ゲーム内のチャットや音声通話を通じたゲーム上の戦術的会話となりつつあります。しかし、かつて子供の頃にゲームボーイやDSを通じて交わした会話はゲームの内側の世界のためのものではなく、ゲームを接点としたゲームの外の世界でのコミュニケーションでもあったのではないでしょうか。すなわち、小説を読み終えた後や映画を見たのちにその感想を語り合うように、ゲームもまた語り合いたくなる文学性を持っています。そうしたゲームの文学性というコンセプトを軸に、本展では4人のアーティストの作品を提示します。

版画を主なメディアとして扱う植田爽介は、地図と電子基板のモチーフを扱ってきた自身の文脈にゲーム文化を接続します。自身の親しんできたゲームで見られるドット状の地図表現と、洛中洛外図屏風のような日本美術の間に見出されたパース表現と省略表現の共通性を出発点に、植田自身によってゲーム世界と現実世界を繋げていきます。本展のメインビジュアルで植田がイメージを引用する《Tennis for Two》は、世界で最初のエンターテインメント目的のビデオゲームであるとされ、アメリカの原爆開発の拠点であるロス・アラモス研究所にかつて勤めていたウィリアム・ヒギンボーサムによって制作されました。自身のリサーチのためにロス・アラモスに実際に訪れていた植田の身体によって、大量破壊兵器の開発とエンターテイメントという、科学技術の持つ正と負の両側面が接続されます。

コミカルなコラージュによってイメージの持つ政治性を明らかにしていく海沼ちあきは、ゲーム上のテキスト表現に着目し現実世界への応答を描きます。海沼は地図が赤と青に色分けされるアメリカ大統領選挙の結果図を陣取りゲームに、株価の動きをダンスゲームに見立て、「Game Over」の文字を重ねることでまるでゲームであるかのように動き混迷を続ける現実世界を写し出します。また、ゲーム内の吹き出しをサンプリングし、プレーヤーに選択が委ねられているようでその実、ゴールに向かうよう価値観の誘導と条件付けがなされているというゲームメディアの前提的特性にアプローチします。

ニューヨークを拠点とするアーティスト、アダム・マーティンはビジュアルノベルの形式を取って、自身が実際に体験したこととフィクションを織り交ぜながら、アートワールドのリアルを描き出しています。プレイヤーは文字送りを進めるごとにホラーゲームのようなヒリヒリとした緊張感を味わいながら、性的搾取をはじめとする様々な「現実」に直面します。背景に用いられている画像処理によって全体的にぼやけた写真や、手前にテキストが重なるキャラクターの立ち絵は、1990年代から2000年代にかけてのノベルゲーム文化を彷彿とさせるものとなっており、そうしたゲームに没入してきたアーティストの手によって、アートとしてのゲームであり、ゲームとしてのアートでもある作品が成立しています。

技術の発展とそれを受容する社会の間に生じる摩擦に焦点を当てる半田颯哉は、ビデオゲームのプレー環境を支えるハードウェアとテクノロジーに目を向けます。特にこの数年間、半田が興味を向けているのは画像処理に特化したコンピューターパーツであるGPU(Graphics Processing Unit)です。画像処理を高速に行うためにもともと並列処理を得意としていたGPUは、その特性によってAIの学習や仮想通貨の採掘にも活用されており、その結果、価格の高騰が起こっています。半田はこうしたハードウェアを巡る環境に視点を向けることで、ビデオゲームが仮想空間のみで成立しているわけではないことを改めて思い起こさせます。

ビデオゲームという表現は、我々を仮想の世界に没頭させ、新たな視覚的刺激をもたらし、そしてときに現実社会を照射した批評となります。本展でアーティストたちは、そうしたゲームの中から見出だした「文学性」を借り受け、その表現によって新たに作品を生み出していっています。それはすなわち、ビデオゲームという表現媒体に対する応答であり、ビデオゲームをより深く咀嚼しようとする親愛の念なのではないでしょうか。

作品販売について

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

会期中に展示作品をご購入いただいた場合、会期終了後の発送となります。あらかじめご了承ください。

植田爽介
植田爽介
Sosuke Ueta
版画が印刷(コピー)による複数性や絵画とデザイン両方の要素を持っていること、またそれらの要素をイメージの起点として分野の横断を試みる。作品制作の過程と実践においては、自身の原風景である瀬戸内の海景がそうであるように、人と自然が並列に共生する関係性について再考し、それを版画技法や複製技術におけるインダストリアルな側面や、マテリアルごとに生じる視覚的な差異などを糸口としてビジュアル化することを試みている。
海沼ちあき
海沼ちあき
Chiaki Kainuma
1995年東京生まれ。2018年多摩美術大学絵画学科卒業。雑コラやVaporwaveなどのインターネットカルチャーに影響を受けながら、資本主義社会の理想郷をテーマに、しばしば皮肉やユーモアを交えた絵画作品を制作する。主な展覧会に個展「KAINUMA and the CHOCOLATEFACTORY」(亀戸アートセンター東京 2024)、個展「超カイヌマ原画展〜ザ・ナイーブ・サンクチュアリ〜」(新宿眼科画廊 東京 2021)、グループ展「Eudaemonia」(Gallery Common 東京 2024)、グループ展「Futurama vol.1」(FOAM CONTEMPORARY 東京 2024)など。
アダム・マーティン
アダム・マーティン
Adam Martin
アメリカ・アイオワ州生まれ、ニューヨークを拠点とする。マルチメディア・インスタレーション、写真、コンピューターゲーム、ナラティブデザインなど多岐にわたる分野で活動する。個人的な歴史と権力システムの交差する地点を探求し、経済、欲望、そして制度的支配の構造の中における、若く憤りを持つ男性の葛藤心理に焦点を当てている。 ビジュアルノベルのような形式を用いたマーティンのプロジェクトは、しばしばインディーゲームカルチャーと現代美術の境界線を曖昧にし、主体性、選択、物語の作者性といった固定観念を覆す。アメリカのアート界に根差しつつも、取引される「親密さ」や制度的な不透明性といった彼のテーマは、世界の文化産業全体とも共鳴する。
半田颯哉
半田颯哉
Souya Handa
アーティスト、インディペンデント・キュレーター。1994年、浜松生まれ、広島出身。テクノロジーと社会倫理の関係や、アジア・日本のアイデンティティを巡る問題に焦点を当てる。2019年、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。また2023年に東京大学大学院学際情報学府修士課程を修了。アジアン・カルチュラル・カウンシルの2024年度ニューヨーク・フェローシップ・グランティーに選ばれている