ARTIST INTERVIEW

現代作家、EDO AND YUMEKA(エド・アンド・ユメカ)の独占インタビュー。
現代アーティストと職人が出会い、生まれる茶道。グループ展「KUROismー現代アーティストが見立てる茶道の世界ー」
<2024年5月10日(金)〜5月19日(日)>

現代アート作家、日本の伝統文化を継承する職人らによる茶道の再構築。伝統文化をアップデートし、私たちにとって芸術とは何であるのかを問い直す展覧会「KUROismー現代アーティストが見立てる茶道の世界ー」。キュレーションを手がけるEDO(EDO and YUMEKA)に聞いた。

ーー 茶道への興味は何がきっかけだったのですか?

子供の頃から粘土遊びのような感覚で陶芸家のもとに行って茶碗を作ったりしていて、身近ではありました。この7、8年くらいで茶道具への興味が湧いてきて、去年のYUGEN Galleryでの展覧会が終わった頃から木を削り出して茶杓を作ってみようと思い、ハマっています。100本ぐらい削り出して、ようやく自分らしさのようなものが見えてきた。そこから、いわゆる茶杓の形ではない自分にとっての茶杓の形があるのではないか? と考え始めました。

2023年4月1日(土)〜4月6日(木)の期間に開催された個展「NUDAVERITAS feat.SUSIESVELT」の様子
2023年4月1日(土)〜4月6日(木)の期間に開催された個展「NUDAVERITAS feat.SUSIESVELT」の様子

ーー それが、展覧会のキーワードのひとつ“再構築”につながると。

茶道だけでなく日本の伝統文化には最大限のリスペクトがあります。それだけに、伝統に敬意を払いすぎていることが壁になっているんじゃないかとも感じる。長い年月かけて残ってきたものは時代毎に再構築されてきたものだとも思うし、伝統的なものをそのまま作るのではなく、今の僕らが同時代性を感じるものを自由に発想することが大事だと感じます。アンチ・伝統というのではなく。

ーー メンバーは多士済々です。

特に磯貝さんやart's gaze 仁の名前で活動しているJINGUUJIは職人なので依頼を受けたものを完成させていく技量がとてつもなく高い。今回、プロデュースをする僕が想像したものを形にしてくれるというか、それを越えてくるセンスへの信頼もある。

淺野君も伝統的な木彫を学んで現代アートに落とし込んだ作品を発表しているのを見ていて、いつかは一緒にやりたいと思っていたアーティスト。石黒君は古着をバラバラに解体してから一点モノの洋服を作っていて、まさに再構築をテーマに活動しているデザイナーで、今回の展示では「Dadaism(ダダイズム)」をテーマに既成概念についての疑問を投げかけるコラボレーション作品として羽織を作ってもらいました。

これまで作ったことがない茶道具を作ったら?という見立てのもと現代アーティストと職人の融合というか、一期一会による化学反応でこそ伝統を再構築できる、最高にカッコ良くなるという確信はありました。

ーー 木に石、鉄、布といった各自が違う素材を扱っています。各作家へのディレクションではどのようなことを意識しましたか。

僕の個人的な黒色に対して抱いているイメージは話しましたが、それは個人の解釈で世界観を作ってくれればいいと。ただ石や鉄といった重量があるものですが“使える”ものであること。棗(なつめ)や茶器といった茶道具を形だけなぞられるのではなく、道具として成立させて欲しいとは伝えました。

KENICHI ASANO
KENICHI ASANO

ーー ご自身にはどんな化学反応がありましたか?

僕らはいつも紙に絵を描いていますが、今回は木で掛け軸も作っています。月をテーマに、月の部分は鉄や真鍮、銅を使って腐食させたりバーナーで色を変化させて、背景はYUMEKAが墨やアクリルで描くといったことをやっています。金属を使った作品を作ってみようと思ったのは、鉄を扱う作家との出会いが影響しているし、さっき言ったような木を削り出して茶杓を作ろうと動かされのも偶然、黒檀や黒柿といった珍しい木が手に入ったりしたことがきっかけ。巡り合わせ、偶然の出会いが何かに繋がるということに改めて気づきがあります。

EDO AND YUMEKA “茶杓”
EDO AND YUMEKA “茶杓”

ーー その偶然とは、つまり非日常であり、今回のテーマ「非日常としての芸術」につながる。

芸術、アート作品を日常的に見ましょう、飾りましょうという今どきの考えも大事なのだけど、もうちょっと非日常と日常の隙間にある、一本路地に入っていかないと辿り着かないような芸術があってもいいのかなと思っていて、それを作りたいという思いが強いんです。

子供のころ、父親に連れられて観に行った山海塾の天児牛大の舞踏は何にどう影響しているのかはわからないのですが、間違いなく自分の人生には強く残っている。暗闇からぬっと白塗りをした人が出てきて踊る。その時の暗闇に沸きおこった自分の感情が何なのかを探りたくて作品を作っているようなものなのだなと最近感じています。そうした非日常の体験を大事にしたい。

お茶の世界はまさに非日常の体験であり、茶室には掛け軸や茶道具といった芸術に溢れた空間で客人におもてなしをする。つまり、茶室とはギャラリーである。そこからの眺めというものが、どんなものになるのか。自分の中に何か気づきを得て、かつ気持ち良く帰ってもらえたら嬉しいです。

山海塾『時のなかの時―とき』©︎Sankai Juku
山海塾『時のなかの時―とき』©︎Sankai Juku

芸術とは、ふだん入らない路地の突き当たりにある景色のようなもの。それに出会った時、どんな感情が芽生えるのか。現代アーティスト・EDOの見立ては、芸術または伝統を私たちが実感のこもったものとして手元に引き寄せるヒントになる。展覧会「KUROismー現代アーティストが見立てる茶道の世界ー」は5月10日(金)〜5月19日(日)まで。詳細は下記個展詳細ページをご覧ください。

ABOUT ARTIST

EDO and YUMEKA
EDO and YUMEKA
アンダーグラウンドカルチャーでのライブペインティング、ジュエリーデザインなどを手がけていたEDOと10代より独学で学んだ日本画をベースに油彩画等さまざまな絵画を制作する画家YUMEKAによるアートユニット。絵画のみならずプロダクト製作、茶道の空間演出など多岐にわたる活動を行っている。東京・ASPLUND/BAROOM/JMT CAFE 個展「SESSION」、愛知・Cafe CEREZA 個展「BACKSTAGE」(以上、2022年)、東京・YUGEN Gallery個展「​​​​NUDAVERITAS」(2023年)など。

ABOUT EXHIBITION

展覧会

KUROismー現代アーティストが見立てる茶道の世界ー

2024.05.10(Fri) – 2024.05.19(Sun)

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31 4F

会期

2024.5.10 (Fri) - 2024.5.19 (Sun)

開館時間

平日:13:00〜19:00
初日・土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了
※休館日:なし

在廊日

5月10日(金)、11日(土)、12日(日)、18日(土)、19日(日)

入館料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

YUGENGalleryでは5月10日(金)〜5月19日(日)の期間、グループ展「KUROismー現代アーティストが見立てる茶道の世界ー」を開催します。

人生は陰陽の連続、さまざまな色彩に包まれた時間… 
 そのすべてを黒の中に見ることができるのではと感じている。
 感情や言葉の中にある黒。艶やかな黒い光沢の奥に広がる宇宙…
 それは私達、表現者が心奪われた“KUROism”なのです。

                  ー EDO AND YUMEKA


現代作家、EDO AND YUMEKA(エド・アンド・ユメカ) の呼びかけに応じて集まったフィールドも経歴も異なる作家たち。石の街、愛知県岡崎市で三代続く石屋で伝統的な石製品を手がけながらアート作品を発表しているYASUTAKA ISOGAI、現代のポップカルチャー的要素と伝統的な木彫を融合した作品を発表する彫刻家・淺野健一、BMWのヴィンテージバイクのレストアを手がける鉄職人・art's gaze 仁、そして「折衷主義ーeclecticismー」をコンセプトに古着をほぐし一点物のワードローブを作り出すファッションデザイナー・KOH ISHIGUROの計5名によるグループ展。期間中、アスリート陶芸家であり遠州流茶人の山田翔太による茶会も開催します。