一林保久道 個展「Hidden things」
2023.10.07(Sat) – 2023.10.12(Thu)
YUGEN Galleryでは10月7日(土)〜10月12日(木)の期間、一林保久道の個展「Hidden things」を開催します。
画面からはみ出さんばかりに暴れ回るキャラクター。それは泡のような雲のような物体に包まれ、起きている出来事は覆い隠される。漫画のドタバタ劇のようなシークエンスを抽象的に描くペインター、一林保久道(いちばやし・ほくと)。本展「Hidden things」では、見えない部分に観る者の想像が掻き立てられる立体パネル作品約10点を展示します。
古典は最先端
京都という土地で伝統美術に日常的に触れ、大学卒業後も意欲をもって日本画制作に取り組んでいましたが「日本画は完成までとにかく時間がかかり、アイディアが溢れているのに作りたいものを作り切れない」と限界を感じていました。支持体には収まらないイメージが湧き上がり、平面からもはみ出そうとする表現欲が高まり辿り着いたのが、アクリル絵具や立体パネルを使った現在の制作スタイルでした。
日本画ならではの題材や画材を離れながらも伝統技法をベースに、メトロポリタン感覚に溢れる色遣いやデジタルのグラフィック的構図を取り込む一林。サランラップやマスキングテープ、梱包用緩衝材など現代的なマテリアルを使用し、インターネットで収集した画像をモチーフにしています。なかでも重要なモチーフとなるのがビデオゲーム。
「現代に古典として残っている美術作品は時代の最先端を描いていたはず。画題だけでなく取り入れる手法も然り。自分が生まれ育った時代を物語る作品こそが古典になり得る。それが僕の場合はビデオゲーム」
子供の頃から遊んできたビデオゲームが時代を形成するものといい、ゲームのストーリー性や音楽を通して見た景色、ゲームの世界観から感じ取ったものを作品に落とし込みます。その時代に生きる人間が眺める森羅万象をキャッチーに表現する点で浮世絵、特に紫や青を基調とした一林の作品は「藍摺」をも想起させます。
雲隠れする事実
本展のタイトルにもなっている作品「hidden things」は、モザイク画の最高傑作のひとつとされる「アレクサンドル大王のモザイク」へのオマージュとして描かれます。2021年に約100年ぶりの修復が着手され、現在も多くの研究者の間で考察が進んでいる名画は画面上に広く剥落した部分があります。ここに歴史認識、そして絵画の価値観をも転覆する事実が隠されているのではないかとのコンセプトから歴史がもつ曖昧さ、人間の不確かさをテーマとします。
「人口は増え続け、人種も宗教もそれぞれの思いが定まらずノイズが増していく世界で、ニュースをはじめ正確な情報を取ることが難しくなっている。そのことに皆が日々モヤモヤしている」
曖昧の肯定
煙のような雲のような背後に明確な色遣いやドット模様などで描かれるもの。誰かが何と戦っているのか、何が起きているのかわからないさまをコミカルに描く一林の作品に、最先端で古典的な人間の姿が浮かび上がってきます。
今回展示する作品は、デジタルデータを元に木材を加工する工具「Shop Bot」を駆使し、変形パネルで制作。平面から立体作品へ。「今は描く内容よりも形に興味がある」と一林は話します。展覧会のテーマ、そして作家の真意は雲隠れし、そこにノイズが生まれます。
展示作品
※展示作品は一部変更となる場合がございます。ご了承下さい。
作品販売について
来場者特典のご案内
展示作品や展覧会ステートメントが1冊にまとめられた、本展のみのオリジナルアートブックです。
一林保久道 写真展「Hidden things」アートブック
B4変型/定価1,650円(税込)
一林保久道
いちばやし・ほくと/石川県出身。1992年生まれ。京都精華大学芸術学部造形学科日本画専攻卒業。自然の中にある鉱物や動植物を色材にしてきた古典的な日本画絵具ではなく、あえてアクリル絵具等を使用することで、人工物に囲まれた社会に生まれ育った世代のリアルな美的感覚を表出させる。架空のキャラクターを登場させ、歴史や時代的な事象をビデオゲームのような構図で描くことで虚実をないまぜにした世界観を展開。作品を発表するほか、LOSTAGE & bacho スプリットアルバムジャケット(2019年)などコミッションワークも手がけている。
会期
2023.10.07 (Sat) - 2023.10.12(Thu)
会場
YUGEN Gallery
住所
東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル3F
開館時間
※最終日のみ17:00終了
休館日
なし
在廊日
10月7日(土)、12日(木)
入館料
無料
注意事項
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。