グループ展「Freestyle Asians」

グループ展「Freestyle Asians」

2023.01.14(Sat) – 2023.01.19(Thu)

 YUGEN Galleryでは2023年1月14日(土)〜1月19日(木)の期間、アジア4ヵ国6名の作家らによるグループ展「Freestyle Asians」を開催します。

ルーツを辿り、越境するストリート

YUGEN Galleryが2023年のオープニングに取り上げるのはアジアのアーティスト達。ストリートアートの手法で自国文化の独自性を立ち上げ、そこから地球規模の価値観を模索する6名。CYH ジェイソン 大腸王(台湾)、ワシン・パイサックハマス(タイ)、モンテミス(タイ)、一林保久道(日本)、ジンルー(中国)、WOK22(日本)です。 

 1990年代以降立ち上がってきたストリートカルチャーは、身の回りの日常を題材にしてオルタナティブな世界の見方を提示してきました。台湾のグラフィティアートシーンにおける最重要人物とされるCYH ジェイソン 大腸王は「アイデアはランダムな毎日のニュース、自分の身の周りのすべてから生まれる」と話し、日常の出来事にノイズを加えた「汚れたストリートアート」で台湾人のルーツを遡り国民性、性、宗教をテーマに作品を制作しています。自身が過敏性腸症候群となったことから病変を創造物と捉えアーティスト名に「大腸の王様」を名乗り、個人の鋭敏な意識で一筋縄ではいかない地域のアイデンティティを探っています。

 多様な価値観が行き交う場であるストリートの磁力の中で、人間が発達させた文明以前の世界へアプローチしようとするのがワシン・パイサックハマス。仏像などのモノクロ写真の上に半蛍光色で奇妙なキャラクターを描くことで新旧の文化接続を表現。そうした作品制作の一方、故郷のタイ西部の街バンポンでアートプロジェクト〈AT Exchange〉を立ち上げ、世界中から写真、ペインティング、グラフィティなど多様なアーティストを招聘しアートフェスティバルを主宰。約2ヵ月間、旧い慣習が残る地域の至る場所で作品展示やライブパフォーマンスなどを行うことで土地に根付いた生活慣習や歴史を浮かび上がらせ、現代との関係性を問いかけます。

ノイズが生む新しい価値観

伝統的な日本画を学んだ一林保久道は、人工物に囲まれた時代に生まれ育った世代による日本画表現を打ち立てようとします。花鳥風月といった日本画で継承されてきた題材から離れ、ネットで拾ってきた情報や自身の断片的な記憶を「曖昧な絵に」起こします。「アーティストが経験してきた時代とはどのようなものだったのか、どんな工程で作品が作られるのかルーツに想像を委ね、食い違いが起きていくノイズ」を可視化。ここには継承されてきた歴史や文化など権威が作り上げた大きな物語への懐疑の眼差しもあります。 

 いずれの作家もノイズによってルーツから現在までの系譜を紐解き、この先の景色を描き出そうとします。

 ジンルーがノイズで表現するのは記憶や世界のゆらぎ。「私が感じている色の世界は常に変化し動いている。それを私の第一の直感で捉え、最短の時間で最も粗暴な技法で記録する」と話します。ラフなスケッチやノイジーな色遣いなど「不完全な痕跡を残した」作品に記憶の不完全さが描かれ、私たちが拠って立つ価値観や世界が虚構であることを明るみにします。こうした今ある価値観への問いかけは、一林と通じるものがあります。 

 文化や人種、そして時代など相容れない流儀が交錯し、ゆらぎながら紡がれる記憶や体験。その中で浮かび上がるアイデンティティが新しいランドスケープを予感させます。

 波や雲といった自然をモチーフにし、可愛らしさのなかにもおぞましさがある浮世絵のような世界観を展開するWOK22のグラフフィティ作品には、異界への怖れとそれと拮抗する好奇心が表れています。そこから最近では題材をシンプルな柄へと昇華させ、有象無象が空間を自由自在に往き来し、関係し合うことをテーマに作品を制作しています。

 漆や透かし絵といったタイの伝統技法を踏まえたグラフィティアートを展開するモンテミスのテーマは「生と仏教」。「地獄に関心がある」と話すように地獄絵図を思わせるイメージを躍動感のあるタッチで描きます。迷いと煩悩がある世界と、そこから解放されたいわば極楽浄土の二元構造で世界を捉える仏教の宇宙観から、新たな価値観の領域を現そうとします。

はじまりを予感させるアジア

経済や文化など関係の網が複雑に絡み合う現在の世界で、自らの「血」と「地」について考えを巡らせる。国家が作るような大きな物語ではなく、むしろそこからこぼれ落ちる小さな物語を個人の感覚で拾い上げ、各自が持ち寄る。そこで直面する感覚の差異に関係の深み、魂の揺さぶりがあるとの観点に立ったのが本展。

 わかりあえない他者が行き交い、剥き出しの価値観が転がっているストリートをメディウムとするアジアのアーティスト6名がそれぞれのルーツを携え東京・渋谷で交わる。新しい地球規模の価値観が生まれる“はじまり”の場所はアジアのストリートであることを強く予感させるコレクションです。

展示作品

HOKUTO / TOKYO

SMITH / BANGKOK

JAYSON / TAIPEI

WOK22 / FUKUOKA

WASIN / BANGKOK

JINLE / SHANGHAI


※展示作品は一部変更となる場合がございます。ご了承下さい。

作品販売について

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

来場者特典のご案内

ご来場時にアンケートフォームよりご回答頂いた方限定で、オリジナルアートブックを無料でプレゼントします。 
展示作品や展覧会ステートメントが1冊にまとめられた、本展のみのオリジナルアートブックです。 

 グループ展「Freestyle Asians」アートブック 
収録アーティスト:CYH Jayson 大腸王/Wasin Paisakhamas/一林保久道/JinLe Zhu/WOK22/Montemith 
B4変型/定価1,650円(税込) 

 ※アートブックのデザインは一部変更となることがございますのでご了承ください。

CYH Jayson 大腸王

シーワイエイチ ジェイソン ダーチャンワン/台湾・台北出身。15歳で渡米し、ノース・テキサス大学で美術を学ぶ。台湾に帰国しストリートアートとファインアートをかけ合わせた作品を制作。田名網敬一の影響を感じさせるサイケデリックな色彩やセクシャルな世界観が特徴。「あらゆる物事を汚して見せるのがスタイル」と話しつつ、世界中の科学者やアーティストとともに海洋環境保全活動にも取り組んでいる。

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Wasin Paisakhamas

ワシン・パイサックハマス/タイ・ラーチャーブリー県出身。ペインター、フォトグラファー、キュレーター。バンコク大学でファインアートを学ぶ。自身が撮影したモノクロ写真の上に、カラフルなキャラクターを描く作風が特徴。そのほかにもペインティングとデジタルメディアを組み合わせ作品を制作している。人間が高度に発展させた時代以前の世界観を描くことで、戦争など問題が増え続けるばかりの世界を風刺している。

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一林保久道

いちばやし・ほくと/日本・石川県出身。1992年生まれ。京都精華大学芸術学部造形学科日本画専攻卒業。自然の中にある鉱物や動植物を色材にしてきた古典的な日本画絵具ではなく、あえてアクリル絵具等を使用することで、人工物に囲まれた社会に生まれ育った世代のリアルな美的感覚を表出させる。古典的な日本画技法を駆使し、ゲームのビジュアル表現を採り入れ2000年代以降の風俗をモチーフにした作品を制作している。

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JinLe Zhu

ジンルー/中国・浙江省出身。1984年生まれ。中国美術学院でパブリックアートを学ぶ。アーティストとして活動しながらアートディレクター、上海設計学院で非常勤講師などを勤めている。iPadやiPhoneを活用したペインティングやドローイング、スチームパンク的世界観のヴィジュアル作品などを制作している。空間デザイン、家具や化粧品まで多岐にわたる商品開発、国内外でブランドとのコラボレーショも多数。

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WOK22

ウォック22/日本・愛知県出身。現在は福岡県を拠点とするグラフィックアーティスト、ペインター。2008年作家活動を開始し〈STUSSY〉、〈Adidas〉、博多人形など多岐にわたるコラボレーションワークを手がけ、台湾や韓国、タイ、フィリピン等アジア圏での活動も精力的に行っている。明るくも重厚感のある色遣いが特徴的で、一枚絵を描くというよりさまざまな要素をかけ合わせたコラージュ的作画を得意とする。

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Montemith

モンテミス/タイ出身。アーティスト、イラストレーター。シルパコーン大学装飾芸術学部卒業。コミックの描画技法を用いてタイに古くから伝わる民話や伝説などの世界観をウォールアートとして展開している。スケートブランド〈PREDUCE〉や〈CONVERSE〉、〈ASICS〉等とのコラボレーション多数。タイの伝統工芸に造詣が深く、自国の文化をストリートアートによって次代に繋げようとしている。

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会期

2023.01.14(Sat) - 2023.01.19(Thur)

会場

YUGEN Gallery

住所

東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル3F

開館時間

月〜金   14:00〜19:00 
土・日・祝 13:00〜19:00 
※最終日のみ17:00終了

休館日

なし

入館料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。