グループ展「Daily Fables」【福岡】

2025年10月25日(土)〜11月13日(木)

YUGEN Gallery FUKUOKAでは、2025年10月25日(土)〜11月13日(木)の期間、グループ展「Daily Fables」を開催します。

展覧会情報

会場

YUGEN Gallery FUKUOKA
福岡市中央区大名2-1-4 ステージ1西通り4F

会期

2025年10月25日(土)〜11月13日(木)

開館時間

11時〜19時
※最終日のみ17時まで

休館日

毎週火曜日

在廊日

未定

入場料

無料

注意事項

※在廊日について、最新情報は随時こちらで更新いたします。
※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

展示作品ハイライト

ステートメント

日常に潜む寓話に入り込む

動物や架空のキャラクターが私たちの日常に紛れ込む。古代神話に始まり漫画、アニメまで古今東西で息づいてきた擬人化の手法で、日常に潜む寓話性を表現する作家たち。参加するのはあごぱん、ヨシサコツバサ、カメ子カメ男、弓指貴弘の4名です。それぞれが設定するキャラクターが媒介となり現実と虚構の境界、自我のありかを探る試み。計約20点の平面作品で構成します。

あごぱんは、パンダをモチーフに公共交通機関のラッピングイラストや店舗のアートワークなどを手がける「パンダ絵師」。《風神雷神図屏風》のオマージュ《パンダ風神雷神図》や愛らしいパンダが桜島やそれを臨むビーチで屈託ない姿を見せる《サクラジマンダラ磯の極楽浄土》など江戸絵画のアプローチを感じさせる作風が特徴です。

カメ子カメ男が描くのは、苛立ちと諦めの表情が交互に浮かぶ女の子、そして彼女と行動をともにする動物たち。数年前に愛犬との別れから灰色を基調とする作品を描くようになったといい、モノクロームの画面からは儚くも確かに残る「生」の記憶、その裏にぴたりと張り付いた孤独や不安が感じられます。

弓指貴弘は古来より恐れの対象とされた鬼をポップなキャラクターとして再構築する《toon demon》や高度情報社会での自我のあり方について問いかける《mirror of the soul》といったシリーズ作品を発表。明度の低い色彩とシンプルな画面構成は夢幻的で、形なきものへの畏れといった日本的な美意識を感じさせます。

鹿児島大学教育学部で美術を専攻したヨシサコツバサは、絵画の技法を活かしたイラストレーション作品を発表。背景に描かれる風景は拠点とする鹿児島を思わせますが、明確な色遣いで描かれるそれには現実味がありません。そこに現実と虚構の媒介としてのうさぎが紛れ込み、日常に潜む寓話の世界を展開しています。

現実それとも虚構。白黒つかない世界

平安末期の鳥獣戯画から現在のポップカルチャーまで現実の重みを軽やかに虚構化し、その虚構から真理を浮かび上がらせる擬人化。形なきものを「恐れ」るのではなく「畏れ」る日本固有の精神文化であり、不確かな世界をサバイブする方法論でありました。

疫病や災害など「見えない恐怖」に覆われた時代に具現化された鬼はその典型。弓指はその鬼を恐れる対象ではなく、日常で隣り合わせる愛すべき存在として解釈。恐怖=鬼は経験や記憶といった人を形成するものでありアイデンティティの一部。「退治」する邪魔者ではなく「対峙」する共存者として捉えます。

カメ子カメ男が描く女の子。彼女が立つのは白/黒の分岐点であり、その上には善悪の二元で割り切れず、現実とも虚構ともつかないグレーの世界が広がっています。カメ子カメ男は作品や創作行為も「見る/見ない」「表現する/しない」の分岐であるとします。そこから価値観の行方が変わる点でアートの本質は分岐にあるとも。人生において分岐は連続し、行けども行けども突き当たらない無限性。現実と虚構の分岐に立つ少女がまなざすのは、自我の探求をし続ける人間の存在といえます。

絵画でこそ達成するイリュージョン

あごぱんは日本国民のアイドルとなって久しいパンダを、ヨシサコツバサは古来より幸運や生命力の象徴とされたうさぎを明確な色遣いで描いています。いずれも画面の強度が高く、寓話性を前景化させていくことで人が視覚によってのみ絵の中へと入り込むイリュージョン空間を展開。1940年代以降に興ったモダニズムの芸術論が提示した絵画の「平面性」や「ほかの芸術との境界の確定」を想起させ、多様かつ高度化するメディア環境において絵画のアイデンティティに言及。そこから絵画の枠組みを越えようとする意気をも感じさせます。

明度が低く絵画そのものをキャラクターとして捉える弓指貴弘とカメ子カメ男、それに対して明瞭な色遣いで絵画をパラレルワールドとして現前化させるあごぱんとヨシサコツバサ。4名の擬人化のアプローチ、2on2のコントラストは本展の見所といえます。

愛らしく奥底が見えないキャラクター。彼らに連れ出されるようにパラレルな世界を旅する。その果てにそれぞれが帰るべき場所としての自我や共同体が浮かんでは消え…私たちはリアリティを見つけられるのか。そして、どんな世界を選ぶのか。絵画だからこそ達成し得るイリュージョンによって探ります。

作品販売について

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

あごぱん
あごぱん
Agopan
パンダ絵師あごぱん 1979年生まれ 2002年鹿児島大学教育学部学校教育教員養成課程社会科卒 パンダのキャラクターをメインに描くパンダ絵師。 描きたいものは、実はどこか愚かで憎めない、欲深い人間だったりする。しかし人間で描いてしまうとなんだかすごく生々しい。 そこで、何をやらせても怒られなさそうな「免罪符のような動物」はなんだろうと考え、白黒で究極の「かわいい」を武器にした「パンダ」をモチーフにしようと思いつく。 様々なパンダとそれを取り巻く出来事を、豊かな色彩と独特の構図で大胆に絵画で表現し、近年は「人を強烈に惹きつけ、観るものを不思議と笑顔にしてしまう」パンダを「福」と「強運」を手にしたキャラクターとしてコミカルに描き、神仏と組み合わせる事で新しい吉祥画として提案すると共に、目には見えず、非常に曖昧な概念であるが、人間の欲や業と切り離すことのできない「運」を捉える事をテーマとしている。
カメ子カメ男
カメ子カメ男
Kameko Kameo
1979年鹿児島県生まれ。宮崎県在住。 マンガ、アニメ、サブカルチャー文化に影響をうける。 灰色の世界やキャラクターに自身の主観的なものを投影し可視化しています。
弓指貴弘
弓指貴弘
Takahiro Yumisashi
1993 年 福岡県生まれ 2018 年 九州産業大学 芸術研究科 修士課程修了 2018年より活動拠点を東京に移す
ヨシサコツバサ
ヨシサコツバサ
Tsubasa Yoshisako
1992年生まれ、鹿児島在住。鹿児島大学教育学部美術専修卒業。 2016年頃から本格的にイラスト制作および活動を開始、2021年よりフリーランスに。 現在、作品の展示会やイベント出展を中心に活動中。 なんでもない日常の中に潜む喜びや悲しさ、うれしさなどを表現した「日常とポップ」というテーマを掲げ、アナログ・デジタル問わず日々制作している。 その他、イベントのビジュアルやグッズイラスト、鹿児島県内の看板イラスト制作なども手掛ける。