グループ展「タイムとマシンの平和利用」

2024.08.24(Sat) – 2024.09.08(Sun)

※好評につき、展示期間を2024年9月8日(日)まで延長いたしました※


YUGENGalleryでは2024年8月24日(土)〜9月8日(日)の期間、タメンタイによるグループ展「タイムとマシンの平和利用」を開催します。

展覧会情報

会場

YUGEN Gallery
東京都港区南青山3-1-31 KD南青山ビル4F

会期

2024年8月24日(土)〜9月8日(日)

開館時間

平日:13:00〜19:00
初日・土日祝:13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了
※休館日なし

在廊日

8月24日(土)、8月25日(日) ※在廊日は変更になる場合がございますので、最新情報はギャラリーのInstagramの固定投稿をご覧ください。 

入館料

無料

注意事項

※状況により、会期・開館時間が予告なく変更となる場合がございますのでご了承下さい。

その他

トークイベント
8月24日(土)18:00〜19:30
※当日17:30〜19:30の間はトークイベントおよびその準備のため鑑賞不可となりますので、ご了承ください。

展示作品ハイライト

加藤康司《止まりながら進みながら》
加藤康司《止まりながら進みながら》
土井紀子《gallop》
土井紀子《gallop》
吉田真也《死を包むもの》「Making Things」国際芸術センター青森 展示風景 撮影 高野ユリカ
吉田真也《死を包むもの》「Making Things」国際芸術センター青森 展示風景 撮影 高野ユリカ
山口達典《失われた語りを聴かせて》
山口達典《失われた語りを聴かせて》

※展示作品は一部変更となる場合がございます。ご了承ください。

トークイベント「よその過去といまとここ——広島・青森・東京」

詳細はこちら

ステートメント

時の流れから「平和」を考える。タメンタイによるグループ展。

広島を拠点に、作品と場所や空間の関係に特に焦点を当てた企画を展開するタメンタイ。
YUGEN Galleryでは同ギャラリーのキュレーションによるグループ展を開催します。参加アーティストは加藤康司、土井紀子、吉田真也、山口達典の4名です。

 

 加藤康司は、他者の物語について、現代を生きる鑑賞者がいかに接近できるかを問いかける作品を発表してきました。3次元の図像を用いた手法を発展させた出展作は、針の位置を固定したまま時計本体が回転する映像作品を中心に、モノとしての時計と個人史を接続しながら「歴史」の周縁を象徴的になぞります。 

 土井紀子は、層的な構造をもった抽象表現による平面作品を発表してきました。本展出展作は、近年取り組んでいる馬とその影をモチーフとしたアクリル板へのシルクスクリーンプリントを発展させた新作です。馬の影を空間に投影する本作は、機械と映像メディアの発展による人馬の関係性の変化への示唆を含みます。

 

 吉田真也は、土地の歴史や文化、風土などの人々の営みの痕跡を捉えた映像を残してきました。本展出展作は、自身の出身地でもある青森県で制作したもの。六ケ所村に出土した縄文時代の甕棺と使用済み核燃料をめぐる架空のナレーションが、映像や写真に映された風景の過去を重層的に物語ります。 

 山口達典は、人工知能やロボットとの対話的な関係性を描く作品シリーズを発表してきました。本展では、被爆三世の美術家としての自負と責任感に駆られ制作した作品群を出展。祖父の遺した事物と向き合うことで、祖父の「生」を描写します。

 

 4名のアーティストは、個人史と引き付けて大きな物語を考えようとするアプローチを共有しています。「平和利用」という表現は、大量殺戮兵器にもエネルギー効率に優れた電力源にもなりうる核のエネルギーを人類はいかに扱いうるかという文脈で、非平和的な帰結をもたらしうるリスクを矮小化するための話術として用いられてきました。現代日本の社会生活は、このように少なからず他者のリスクを犠牲とした恩恵に支えられている一方で、個人レベルの選択肢は現実的には限られています。そこで、同様に科学技術の発展によって表現と鑑賞の手段を多様化させた美術の肯定的な「平和利用」を試みるキュレーションを通じて、美術の可能性を考えます。

キュレーターステートメント

時は刻み続ける。

機械式時計の発明以前、人は影の動きから太陽時を数えた。考古学者は放射性同位体の壊変量から相対年代を求める。 

 8時15分、11時2分、5時46分、2時46分、......。時を刻むのを止めた時計は、時を止めた出来事を象徴するシンボルとなる。 

 影は跡形を残さないのが自然の摂理だが、原子爆弾の強烈な熱線は「死の人影」を石段に焼き付けた。戦地に赴く恋人の影の輪郭をなぞったことから絵画が生まれたとするならば、美術の根源は残酷だ。 不条理がはびこり、混沌とした世界情勢のもとで、「ヒロシマ」は矛盾を受け止める語彙と度量を失っていった。日清戦争以来の軍都としての過去、あるいは原子力の「平和利用」を推進することで「平和都市」を建設しようとした時代があったことは、「平和教育」では教わらなかった。「ヒロシマの心を世界に」と反核を訴えることはしても、その延長線上で我が国の安全保障上の立場やエネルギー政策についての議論となるとトーンダウンし、口ごもってしまうのをずっと見てきた。 

 洞窟壁画からメディアアートに至るまで、美術は流動的な痕跡を留め置き、現前しない存在を伝え残そうとしてきた。時計が時を刻むのを止めても、社会は忙しなく動き続け、イメージは横溢し、淘汰されていく。そうして正義のイメージを無垢に流布するプロパガンダが跋扈する。これに対抗するためには、直線的に整理されてしまった公的記憶を錯綜させなければならない。時間と空間の軸を設定し直すことで、単層的に整備される以前の過去への道筋を探さなくてはならない。 

 「タイムとマシンの平和利用」は、壊れゆく過去の記憶と陳腐化した技術を掘り起こし、知覚可能なかたちで動かし直そうとするものだ。そのために、広島で広島の話をするだけでなく、広島と青森を扱った虚実ないまぜの画と音を東京の空間に満たす。そうして秩序と戯れることによってこそ、この矛盾だらけの社会の構成員としての当事性を回復しようとする。そんな「賭け」へと誘惑するのだ。

作品販売について

展覧会開催と同時にYUGEN Gallery公式オンラインストアにて、作品の閲覧・ご購入が可能となります。

加藤康司
加藤康司
Koji Kato
かとう・こうじ/1994年兵庫県生まれ。2016年弘益大学校( 韓国) 交換留学。2021年東京藝術大学大学院グローバルアートプラクティス(GAP) 専攻修了。受賞歴は、「アートアワードトーキョー丸の内2021」審査員 木村絵理子賞。現在は、行き止まりスタジオ(千葉)主宰、PARADISE AIR(千葉)共同ディレクター。
土井紀子
土井紀子
Kiko Doi
どい・きこ/1997年山口県生まれ。幼少期をアメリカ・バージニア州で過ごす。広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻卒業。同大大学院修了。広島市立大学大学院芸術学研究科後期課程在学中。受賞歴は「第1回FEI PURO ART AWARD」(2022年)入選、「CAAK―Corporate Art Aid Kyoto」(2023年)入選他。
吉田真也
吉田真也
Shinya Yoshida
よしだ・しんや/1994年青森県生まれ。 秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻卒業。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。受賞歴は、東京藝術大学大学美術館 買い上げ賞(「春へ/Toward Springtime」、2021年)他。現在は広島県を拠点に活動。
山口達典
山口達典
Tatsunori Yamaguchi
やまぐち・たつのり/1996年広島生まれ。広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻卒業。同大大学院修了。広島市立大学協力研究員。2022年より千葉県を拠点に活動。